俺も妹も変な件

高二病

第1話 妹がおかしい

俺の妹は最近俺に素っ気ない。というかほとんど話も聞いてもらえない。

それでも俺にとってはたった一人の大切な妹だ。

「なぁ、そろそろ機嫌なおしてくれよ」

「…………」

「別にお前の下着を覗いたりなんかしてないからな? ただちょっと見えちゃっただけだからな?」

「……死ね、変態兄貴」

「いや、あれは事故みたいなもんだろ? それともアレか? お兄ちゃんにパンツ見られたから怒ってんのか?」

「うっさい! さっさと出てけバカ兄貴!」

我が愛しの琴音は俺を部屋に入れるつもりはないらしい。

妹と親睦を深めようと思ったのに……。

「ったく、お兄ちゃんをなんだと思ってんだか」

「下着を覗いた変態だと思ってるよ!」

「いや、まぁ……それは認めるけどさ? でも兄として妹のパンツに興味を抱くのは自然なことだろ?」

「女の子なら誰でもいいんでしょ! このド変態!」

まったく、本当に琴音ちゃんはどうしてしまったのか。思春期真っ只中なのは分かるけど、ちょっと心配になってくるぞ?

「なんかお前最近おかしくないか? 前までは『お兄ちゃん』とか『お兄ちゃん大好き♡』とか言ってたじゃないか。急にどうしたんだよ?」

「それは……その……もう、いいでしょ! ほっといて!」

ふむ、どうやら本気で怒らせてしまったようだ。

だがしかし! 兄として妹のことが心配な俺は引き下がるわけにはいかないのだ。

「ほっとけるわけないだろ? 俺はお前の兄貴なんだぞ」

「……」

「悩みがあるなら相談に乗るからさ、遠慮しないで話してみろよ」

「……どうせ私の下着見たいだけのくせに」

「それは否定しない!」

「うがああああああ!!」

あ、またキレた。

思春期の女の子は難しいな……。

「まぁ落ち着けって。兄妹なんだから隠し事は無しにしようぜ?」

「うるさい! もう話しかけてこないで!」

そう言い残して琴音は勢いよくドアを閉めてしまった。

やっぱりダメだったか……。「はぁ……どうしてこうなった」

本当に最近の妹は変だ。思春期なのは分かるが、流石に異常な気がする。

俺に素っ気なかったり、異様に下着を見られるのを嫌ったり……まるで反抗期の子供みたいだ。

「……まぁでも、このまま放っておくわけにもいかないしな」

妹の悩みに気づけない兄でいるのは兄失格だ。俺は兄貴として妹の力になってやらねばならない。

「よし、なら早速行動開始だな!」

まずは琴音の部屋の前に行ってみよう。

きっと何か理由があるに違いない。

「おーい、琴音! 入るぞ!」

ガチャッ……

ドアを開けた瞬間、俺は驚愕した。

なんとそこには、スカートとパンツを脱ごうとしている妹がいたからだ。

「え……ちょ、おま……」

「わぁぁ!! なんで入ってくるのよ変態!」

妹は慌ててスカートを履き直し、ベッドにダイブして布団に包まった。

俺はというと、あまりに衝撃的な光景に思考回路がショート寸前だった。

「え、えっと……琴音?」

「あっちいけバカ!」

妹は俺の顔を見ようともしない。

これはまずい。非常にまずい状況だ。

このままでは俺の今後の妹活に支障をきたしてしまう!

「頼むから事情を説明してくれ!」

「うるさい! もう出てってよ!」


「そうはいかないぞ! 実の妹がノーパンでいるなんて知っててほっとけるか!」

「うるさい! あっちいけってば!」

「いいや、もう我慢ならん! 力づくでも聞き出してやる!」

俺は強引に布団を剝ぎ取り、琴音の上に覆いかぶさった。

こうなれば実力行使だ。妹には悪いが無理やりにでも事情を吐かせてやる。

「な、なにするの!? やめてよ!」

「いいから大人しくしろ! パンツ脱げそうになってるじゃないか!」

「いやああ! やめてぇ!」

「パンツ脱げてノーパンで学校行かせて変態扱いさせるぞ! それでもいいのか!?」

「やだぁ!」

「じゃあ大人しく事情を話せ!」

「……わかった」

ようやく観念したのか、琴音は抵抗をやめた。

そしてゆっくりと口を開く。

「私……その、最近変なの……」

「変って?」

「なんていうか、男の人にドキドキするようになっちゃって……」

「……うん?」

なんか嫌な予感がしてきた。

「私……男の人を好きになっちゃったみたい……」

「……うん!?」

とんでもない爆弾発言に思わず声を上げてしまう。

「それで、お兄ちゃんのことが気になって……お兄ちゃんが他の女の子と話してるだけでモヤモヤしたり、胸が苦しくなったりしちゃうの……」

「えぇぇぇ!?」

いや待て! まさかそんなことあるわけ……。

いやでも、妹の様子がおかしくなり始めた時期と俺が好きな人を作った時期が一致しているような……。いやいや! そんなわけない! きっとたまたまだ! うん、きっとそうだ。

「お、お前……冗談だよな?」

「ううん、本気だよ」

どうやら冗談じゃないらしい。

しかもさっきパンツを脱ごうとしていたのはそういう理由なのか? え、じゃあ何? 俺の部屋でノーパンになろうとしてたの?

「ねぇお兄ちゃん……」

琴音が潤んだ瞳で見つめてくる。その瞳は熱を帯びており、まるで恋人に向けるような眼差しだった。

「……どいて、お兄ちゃん。私もう我慢できないよ」

「待て! 落ち着け!」

「やーだ♡」

琴音は俺を押し退け、ズボンを脱がそうとしてきた。

「おいこら! 何やってるんだよ!」

「もう我慢できないって言ったでしょ?」

やばい、このままだと俺の貞操が奪われてしまう! いやマジで洒落にならんぞ!? 俺の人生がかかってるんだ、全力で抵抗してやる! 俺は全力で抵抗し、妹を部屋から追い出そうとした。しかし妹には勝てない兄貴の性、兄貴失格だぜと思いながらも我慢出来なかった。「ね、お兄ちゃん。一緒に寝よ?」

「あほか! 狭いから無理だ!」

「ちぇ……じゃあせめて添い寝だけでも……」

「ダメに決まってるだろ! 俺はもう寝るからな!」

もうこれ以上琴音と一緒にいたら何をされるか分からないので、強引に布団に潜り込んで目を閉じる。すると琴音は寂しそうな声で呟いた。

「お兄ちゃんのいじわる……」

ごめんな琴音ちゃん。お兄ちゃんは、実の妹が下着を脱ごうとしてたらほっとけなかったんだよ。

まぁでも、これでひとまず安心かな? 明日からはちゃんと琴音と向き合おう。

「ふぅ……」

そう決意した途端、急に睡魔に襲われてきた。今日は色々あって疲れたからな……もう寝よう……。

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