第20話 3人で登校しました

事情聴取を終えた俺たちは、その部屋を出ると

3人の家族連れが待っていた


「澪!!」

「澪!!」

「お姉ちゃん!」


そう、赤阪の家族だ


父親と母親、それに2つ下の弟


今回の件で連絡が行ったのだ


「警察の人から連絡が来て、お前がストーカー被害にあってるって心配して来たんだ」

「どうして一言も相談してくれなかったの!?」


赤阪は静かに答える


「みんなに迷惑を掛けたくなかったから…」


よく見ると、体が小刻みに震えている

恐怖なのかもな


「そんな水臭いこと言わずに、遠慮せずに相談しなさい!」

父親が一喝


「ごめんなさい…」

今にも泣きそうな顔


ぎょっとした父親は優しく抱きしめ

「無事で本当によかった…」


しばらくして、俺の方を見る


「君が澪を助けてくれたのか?」

「はい、笹岡 勇といいます」

「娘を助けてくれてありがとう」

「「ありがとうございます」」


3人は頭を下げる


「いえ、当然のことをしたまでです。気になさらないで下さい」

「しかし、それでは私の気が収まらない」


デジャブを感じた


「この後、私たちの家で食事でもどうかな?」

「ありがたいお話ですが、ご遠慮させてください」

「そうか。だが、いつでも歓迎するぞ」


あ~、これは郡と似たパターンだな


「笹岡君、また明日…」

「ああ、またな」


赤阪たちと別れて、俺は帰路に就いた


♰♰


5月31日


身支度を終えて、玄関を開けたら


「おはよう、笹岡君」

「おはよう」


2人の美少女 郡と赤阪が待っていた


「何で2人が俺の家に…?というか、どうやって俺の家を知ったんだ?」

「赤川君からSNSで教えてもらったの」

「ついでに私も」


おいおいおい!!


あの野郎、俺に内緒で俺の家を教えてたのか!?


まさか、こうなる事を見越して…

いや…、考えすぎか…


一度、咳払いをして


「それで、二人は俺に何の用だ?」


聞く必要もないと思ったが、あえて聞くことにした


「一緒に登校しましょう」


郡は、俺の右腕に両腕を絡める


「じゃあ、私は反対側を」

赤阪も同じように絡んできた


「ちょっと待て…。これ、俺が非常に動きづらい…」

「私たちがエスコートするから安心なさい」


安心する要素なんて一つもないがな…


♰♰


学園に入るやすぐに、男子たちからの痛い視線が刺さる


「くそぉ、あいつまた会長と登校してるぞ」

「しかも、隣には赤阪まで…」

「ハーレムでも築くつもりか…?」


そこ、聞こえてるぞ


と、そこへヒロがやってきた


「よっす、勇。両手に花とはいいね」

「うるさいぞ、俺の住所をばらした張本人め」

「とかいって、まんざらでもない顔してるくせに」


一言余計だぞ!


さて、クラスに入るころだが

郡は俺から離れようとしない


「おい、もう少しで予鈴が鳴るぞ」

「もう少しこのままいさせて…」


その様子を見た赤阪がため息をして


「あの、会長がそんな我儘していいの?」

「我儘したっていいじゃない。一秒でも離れたくないの」


あの郡が、恋人のような発言をしている!?

クラス中がどよめく


「あ、朱鷺川先生が来た」

「え!?もうそんな時間!?」


郡が慌てて後ろを振り返るが、先生らしき姿はどこにもない


「あ、あなた…、やったわね…」


おっと、今度は怒りの顔を見せてくる


「そんな顔しないの。休み時間でも会いに来ればいいだけの話じゃない。笹岡君がすぐにいなくなるわけないし」

「…そ、それもそうね…」


正論をつかれて、郡はトボトボと自分の教室へ向かった


随分と感情豊かになってきたな、あいつ…


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