第18話 逮捕しました

「…な、何言ってるの!?」


俺の発言に、赤阪は顔を赤くしながら戸惑う

まあ、突然あんなこと言われたらそうなるわな


「ストーカーを捕まえるために言ってるんだ」

「で、でも…、笹岡君に迷惑がかかるし…」

「大丈夫、俺に策がある」

「…?」


何をするのか不安な顔をする赤阪をよそに、俺は次の作戦を実行する


♰♰

俺は、赤阪を部屋に案内した


「ここが、笹岡君の部屋…。ちょっと意外」

「意外って?」

「漫画がたくさんある。あまりそういうイメージがなかったから」

「はは、樋山にも同じこと言われたな…。とりあえず、適当に座って」

「うん…」


赤阪が座ると


「ねえ、さっきの策で本当に大丈夫なの?私のカバンを置いておいて」

「大丈夫、もうじき――」


警察が来ると俺が言う前に


「人様の家で何してんだ、ゴラアァ!!」


近所の家から男性の怒号が響く


「予想通りだな」

「あ、あの…、あそこの家って…」

「極道じゃないよ。ただ、昔やんちゃしてた人だから、ちょっと怖いけどね」


話を少し遡ろう


♰♰


「ここって、違う人の家だよね?」


俺の家に行く前に、近所の人の家に来ていた


「うん、頼りになる人だから安心して」


インターホンを鳴らし、出てきたのは40代の女性


「あらぁ、勇君じゃない!」

「こんにちは、おばさん」

「って、まあ、べっぴんさんを連れてきちゃって…、もしかして彼女?」

「そ、そうじゃなくて…実は」


俺はおばさんに事のあらましを話す


「なるほどね、そういう事なら協力するわ」

「ありがとうございます」


奥からズンズンと重い足でこちらに来る巨人


「聞き覚えのある声がすると思ったら、勇じゃねえか」

「お久しぶりです、おじさん」

「話は聞かせてもらったぜ。人の尊厳を踏みにじるような野郎は許さねえ。俺が取っ捕まえてやるから、安心しな」


頼もしい御仁が協力してくれた


俺は、あえて赤阪のカバンをおばさんの家の庭に置かせてもらった


ストーカーは対象者のカバンなどに、隙を見てGPSといった位置情報を特定するものを仕込ませていることがある


2021年8月に改正されたストーカー規制法により厳しくなっているが、このゲームの世界はそれより少し前の時代なため、まだ緩い方だ


そして、この手法は原作でも同じなのだ


ヒロがさっきの夫婦に協力を仰ぎ、ストーカーを逮捕する

俺はそれをしているに過ぎない


~ストーカーside~


「はぁ…はぁ…はぁ…」

僕は何とか…、モールの地獄から抜け出した…


「あいつ…よくも、この僕を虚仮こけにしてくれたな…。この報いは必ず…」


僕はスマホで澪ちゃんの居場所をチェックする


「なるほど、見つからないように知らない人の家に潜り込んでるんだね。でも、君が何をしようと無駄だ。僕がちゃ~んと見つけてあげるからね」


そして、僕は澪ちゃんが身を隠している家に着いた


「さて、澪ちゃんの彼氏ですって紛らわせればよし。それじゃ早速…って、ん?」


庭先に澪ちゃんのカバンを見つける


「まさか澪ちゃん、危ない目に遭ってるんじゃ!?」

焦った僕は、カバンを取りに庭に走る


すると、窓が開いて


「人様の家で何してんだ、ゴラアァ!!」


突如、男性の怒りの声が響く


「ひいいいいぃっ!??」

僕は怖くなり、尻餅をつく


だって、目の前にいる男、めちゃくちゃでかいし、顔も怖い…!


男に胸ぐらを捕まれ、宙に浮く


「てめえか、嬢ちゃんをつけ狙ってるストーカー野郎は!」

「…な、何の事ですか…?僕はただ…」


あえてはぐらかそうとしたけど


「てめえの魂胆は丸見えなんだよ!!嬢ちゃんのカバンにGPS仕込ませやがって!!何が狙いか3秒以内に答えろ!!」

「GPSなんて仕込ませてないですよ…」


その場を乗り切ろうとしたら…


「失礼するぜ」

「あ、ちょっと!?」


一瞬で、僕のスマホをポケットから抜き取り、画面を見せてきた


「おい、この地図に点滅してるやつ、ここ俺の家だよな?」

「さ、さあ…、場所が違うんじゃないですか?」

「ここに来てまで白を切るとは、大した度胸だ。だが、店の名前とか載ってるから一発でバレるぜ。この近辺の人たちに訊いても同じ答えを出す。つまり、お前がストーカーだという明確な証拠だ」

「あうぅ…」


もう逃げ場がない…


「ストーカーだってこと、認めるか?」

「はい…、すみません…」


リビングの方から奥さんと思われる女性が出てきて


「あなた、警察を呼んでおいたわ」

「サンキュー」


ああ、何もかも終わりだ…



♰♰


パトカーがおばさんの家に停まり、俺たちはすぐにそこへ向かう


両手に手錠を掛けられ、パトカーに乗せられる男


無精髭を生やし、ダボダボなパーカーを着たニートらしき格好


原作通りの男だ


男はこちらを見て


「澪ちゃん!?澪ちゃんだよね!?」

すぐに俺たちの存在に気付く


「俺の後ろに隠れてろ」


俺は赤阪を背中の方に回り込ませる


「どうしてその男の後ろに隠れるんだ!?お前、邪魔なんだよ!!」

俺に対しての殺意をむき出しにする


「こら、早く乗れ!!」

強制的にパトカーに乗せられ、連行されていった

パトカーが交差点を左折するまで、男が何か叫んでいる姿が見えた


俺は、現場にいた刑事の存在に気付く


「真鍋さん?」

「君は、笹岡君じゃないか!?どうしてここに?」




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