日ノ本腐女子神話
@botamaru-yuki
第1話 冥界村下り
むかしむかし、あるところに神絵師がおったそうな。
神絵師はその技量から、同じオタク村に住む住人から神と崇められておってな。
本当の名前もあるんじゃが、“神絵師”と呼ばれておったんじゃよ。
ある日神絵師がな、
昔馴染みの女神がどうやら地下の“旬ジャンル村”におるらしいと風のうわさに聞いたんじゃ。
女神の紡ぐ文章の美しさを思い出した神絵師はな。
「久しぶりに女神に会いたい、それに今話題の旬ジャンル村にも興味がある。これは行くしかない」
と、いそいそと旅支度を始めた。
そうして地下道を下り、旬ジャンル村についた神絵師は無事に女神と再開することができた。
女神も神絵師を覚えておってな。「ああ、あなた様の絵をこのジャンルで見ることができると思うとわくわくする」とたいそう感激しておった。
神絵師も「あなた様の綴る世界観を楽しみにしている」とアツい言葉を交わしたんじゃ。
さて、神絵師が女神に
「自分はまだこの作品を知らない。だがあなた様の推しCPにはとても興味がある。今はどのようなジャンルにハマっておられるか」
と問いかけると突然女神はそわそわし始めた。
「マァ、えっと…」
なかなか要領を得ない女神の返答に、
(なるほど、言ってしまうとネタバレになる部分にハマっておられるのだろう)
と思った神絵師は、
「ならばまずは旬ジャンル村の公式作品を読みたい。どこで見られるか」
と女神に問いかけたんじゃ。
女神はほっとした顔で、別室に案内した。
そこには単行本全巻と週刊誌最新刊まで全部そろっておってな。
これはこれは、と驚く神絵師に、
「これを読み終わったらわたくしの二次創作をお見せしましょう。それまではわたくしの作品を覗いてはなりませんよ…」
と伝えると女神は別室へ行ってしまった。
どれくらい時間が経ったかの。
神絵師は旬ジャンル村の作品を夢中になって読みふけった。
美しい作画、細かくちりばめられた伏線、魅力的な登場人物、複雑に絡む人間関係…
全てが神絵師を魅了した。
こんなifを書きたい、この人物たちを絡ませたい…BがLしたい。NもLしてほしい。GのLも捨てがたい。
尽きることなく創作意欲が沸き上がる。手元のメモ描きがはかどるはかどる。
その時ふと、気づいてしまったんじゃ。
女神と自分のCP傾向が逆である可能性に。
昔の村では奇跡的にCPが一致しておった。
じゃがこの村でも一致するとも限らぬ。刺さる場面も人それぞれ。
それがわからん神絵師ではなかった。
おそるおそる神絵師は女神の作品をこっそり覗き見した。
…逆カプじゃった。
神絵師は落胆した。
女神の書く最推しCPを読む夢は、もはや叶わぬかもしれぬと。
わたしはABが描きたい。読みたい。しかし女神はBAを書きたいと。
神絵師はBAを描くことにも抵抗はないが、なんとか女神にABを書いてもらうことはできぬだろうか。
そう女神へ嘆願に行ったところ、女神はたいそう憤怒なさってな。
「わたくしの二次創作を、最新話まで読み終わる前に読んだのですね…!
その上最新話まで読んでいればBAが公式なのに、ABを推すなんて…!」
神絵師が最新話まで読んだ上でAB派だと伝えても火に油。
ひとまず神絵師は物理的に距離を置くために逃げることにしたんじゃよ。(続)
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