夜、自販機の明かりに吸い寄せられる俺。

境 仁論(せきゆ)

第1話

大体22時から23時くらいがいい。


大学のキャンパスでひっそりと青白い明かりを吐き出している筐体。


誰もが眼も向けずに通り過ぎる人為的なオブジェを目にした途端に、ひとしきりのロマンを感じざるを得ない。


一種の、ノスタルジーを感じざるを得ない。


例えばそれは。


田舎の小さな電気屋の看板娘のような君。

自然溢れる公園にて、兄弟のように並び僕たちを見守っていた君たち。


夜、自分がいつも目にする、寂しい一人のキミ。


冷えた宵の刻なれば、その唸りはよく響く。

そうして君たちは24時間、見向きもされない時ですらもコンビニ然としているんだね。

深夜のコンビニ店員は、客が来て初めて顔を出すけれど。

キミタチは季節問わず缶コーヒーを冷やしたり、温めたりしているんだ。


健気だね。


僕は写真を撮るのが好きだ。

でも、肉眼で見ても当たり前に美しい風景はあまり撮らない。

どちらかというと、陽の目の当たらない孤独を営む何かに共感を覚える。

今日もパシャリ。

無機質で何も変わらない君の写真を撮った。

構図は変わらないけれど、季節は変わるから撮影のしがいはあるのさ。

一枚、とびきり好きな写真がある。


ちょうど目の前に桜の木が立っていた君。

程よく花を建てていた樹木を照らすその姿を撮った。


あまりに対比的。あまりに、非対称的。

非共存の、共存。


まあここまで語っておいて、なんだ。

今日も今日とて、コーヒーを買わせてもらうよ。


いつもお疲れ様。

肌寒い月夜に、乾杯。

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夜、自販機の明かりに吸い寄せられる俺。 境 仁論(せきゆ) @sekiyu_niron

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