第20話

「よし、誘ってみよう」


 私はお風呂を出て、タオルで体を拭くと一旦浴室を出てリビングにいるリークの元へと向かった。リークは水晶に関する本を読んでいる。


「リーク」

「ナターシャ、どうした」

「一緒にお風呂に入らない? バラ風呂よ」

「え」


 リークは思わず固まってしまった。


「あ、その……嫌なら良いから!」


 と、私が申し訳無く話すとリークはしばらくして入る。と答えてくれた。

 

「いいの?」

「せっかく誘ってくれたし、入る」


 その後先にリーク→私の順で互いに体を見ないようにしながら服を脱いで風呂に入った。

 私もリークも体にはタオルを巻いている。


「これがバラ風呂かあ」

「リークは初めて?」

「ハーブや薬草を入れたりはするが、バラは初めてだな」


 それにしても、リークの体格は素晴らしく目を見張るものがある。筋骨隆々で肌のハリも瑞々しくてすごい。

 彼の体を見るたびに、心臓の鼓動が早くなる。


「疲労回復の魔術がかけられてるんですって」 

「そうなのか」

「ええ」

「確かに、疲れが取れていく気がする」


 どうやら、魔術の効果がリークにも現れているようだ。


「匂いはどう?」

「うーーん……」


 バラの香りに関しては、リークはそこまで気に入っている素振りは見せない。


「匂いがキツいかもしれない」

「そうなの?」

「気のせいかもしれないが」


 その後もしばらく、2人で入浴を楽しむ。

 それにしても疲れは取れていくのに、心臓の鼓動だけは早い。


(ドキドキする)


 すると、リークは突如立ち上がり風呂から出た。彼の全身が露わになる。鍛え抜かれた体が魅力的に映る。


「も、もう出るの?」

「ああ」

「そ、そう……」

「のぼせてもよくない」

「確かにそうね」


 リークの言う事は最もだ。だが、もう少し一緒に浸かりたいと考えてしまう自分もいた。

 すると、リークはその場に膝を立てて座り込む。


「ナターシャ、良かったら背中を流してほしい」

「!」

「頼めるか」

「え、ええ!」


 私は彼の言う通り、桶で湯を掛けてあげた。


「ありがとう。もう出る」


 リークはお風呂場から去っていった。ここで早くなっていた心臓の鼓動がようやく静まっていく。


(リークが着替えてから、私も出よう) 

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