第17話

「これだけ取れれば大丈夫じゃろ」


 水晶柱に水晶。どれも上質なものが採掘出来た。これらはマッシュが全て業者へと渡すのだという。業者が来るのは明日。私はこの作業にも同行させてもらう事が決まったため、この水晶窟の近くにあるマッシュの家にリークと共に泊まる事になった。


「また明日よろしくお願いします。マッシュ爺さん」

「おう。じゃあ、夕方になったらわしの家へ行くか」

「じゃあ、そのように」

「よかったら、鹿を1頭仕留めてくれんかのう。ごちそうを作りたい」

「分かりました。仕留めて来ます。ナターシャはここにいるんだ」


 リークはそう言い残して、水晶窟から出て行った。私とマッシュも入り口まで移動する。


「リーク気を付けて」


 既に遠くなっているリークにそう伝えると、リークは振り返って笑ってくれた。


「ナターシャよ、リークとは如何にして出会ったのじゃ?」

「ああ、私が怪我をしたまま山奥を歩いていた時、たまたまリークの家にたどり着いたんです」

「ほう……?」

「彼は怪我の手当とか色々してくれたので、感謝しています」


 実際彼の親切さに何度も救われてきたのだ。その点は感謝しかない。


「そうか、あの男らしいものよ」

「……そうですか」

「大事にするんじゃぞ」


 マッシュのその言葉は、低く熱の籠もったものだった。


「はい」


 しばらくして、リークが立派な雄鹿を1頭仕留めて戻って来た。水晶窟の近くで鹿の解体と下処理を終えるとちょうど夕方となる。


「では水晶窟は封鎖するぞ」

「はい」


 水晶窟は封鎖され、その足でマッシュの家へと向かった。

 マッシュの家の周りは周辺の木が伐採され、そこだけ広々としている。そして家はリークが住まうものを大体2倍に広めたくらいの広さだ。

 マッシュが帰ったぞと大きな声で叫びながら玄関を開けると、中から老婆が出て来た。


「おかえりなさい、あらお客さんがいる。あ、リーク久しぶりね」

「リーク、ナターシャ。うちの家内のメイルじゃ。魔女になる」

「よろしくね、2人とも」




 

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