第16話
「戦……もしかして、こっちも」
「ああ。召集されてもいいよう、覚悟はしておけ」
この狼男2人の会話の意味に、私は心当たりがある。
戦には、人間の兵隊だけでなく人外も対象になる。無論狼男だってそうだ。人外を召集すれば人間よりも兵力や力に期待が持てるからだ。
ナターシャだった時。狼男だけで編成された隊を見た事がある。その隊に所属する狼男は常時興奮剤を打たれて、いつでも敵めがけて襲い掛かれるようになっていた。
銃や大砲といった兵器もあるが、やはり人外の召集はメリットがあるものだ。
「もう、戦はこりごりです」
リークが寂し気にそう呟いた。
「ああ、わしもじゃ。戦をしても何もならん」
「そうです。ただ疲れるだけ……」
「だが、こんな事、皇帝が聞くかというとのう……」
キムは父親の先帝よりも好戦的な男だ。彼から戦を取る事は即ち食事を抜く事と同義と言っていいくらいだ。
(無理だろうな)
このまま戦が続き、民草が荒廃していくというシナリオは、想像に難くない。
「最近は、水晶や金だけでなく、鉄や鋼も高騰しているらしいのう」
「そうなんですか……」
「うむ……。辛気臭い話はここまでにして水晶を掘ろう」
「そうですね」
私も水晶掘りをやってみる事にした。ピッケルで土に埋まった水晶柱を掘り進め、最後は手で掘り出す。
「わあ……」
美しい水晶柱。研磨すれば一体どれくらいで売れるのだろうか。
「綺麗ね、リーク」
「ああ」
「どれくらいで売れるかしら」
「うーーん、これはかなりの高値で売れると思う。マッシュ爺さんはどう思う?」
マッシュが眼鏡をかけて、私が掘り出した水晶柱を鑑定する。
「研磨すれば……かなりの高値になる事間違いなしじゃな。これだけで半年は生活に困らん値じゃろう」
「そんなに?!」
よし、これは必ず売ろう。
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