Unison

トモフジテツ🏴‍☠️

Unison


――どうして目を離しちゃったんだろう……


 リビングに戻ったアイは、ほんの数分前の行動を深く後悔しひざから崩れ落ちていた。

 そして激しく動揺どうようしながら、少し間を置き我に返る。


――連絡! すぐに……連絡しなきゃ!


 ポケットから取り出したスマートフォンを握りしめ、撮影すべきか連絡が先か、逡巡。


――こんな時は、えーと……電話? 文章?


 アイはあわてながらも、勤務中の夫をおもんぱかり、ほんの一行いちぎょう程度ていどちぢめたメッセージを入力する。



「ただいま」


 帰宅した夫は、自分の端末たんまつ画面をアイの方に向けつつ心配そうに尋ねる。


「これさ、何かあった? 昼間の『メッセージの送信を取り消しました』ってあるけど」

「それね、なんでもない!」

 

 この時アイは一つの嘘をつく。

 大きな事件のための、小さな嘘である。


「それより、こっち来て!」


 彼女が夫を呼び、事件が〝再び〟発生する。

 生後せいご十ヶ月になる愛娘まなむすめ

 小さな命が起こす、とてつもない事件。


真凜マリンが……ほら見て!」

「おぉ、がんばれ! がんばれ!」


 低い机に助けられ、の〝つかまり立ち〟事件が発生。


「立ち会えてよかった!」

「私も見た!」


 アイは送信を取り消した文面を思い出す。


『私はいま、事件の現場にきています』


 完


 本作は天野蒼空さん(@kro_ba_)の主催する「第10回空色杯」の募集を見て思いつき、一気に書いた後ガッツリ削った内容になります。


 当初の内容に近いものも、続く第二話「1000文字版」として投稿しておきます。

(投稿するまで長編の部の規定「1000文字以内」と勘違いしておりました)


 読み切りも文字数限定もテーマ縛りも、全てが初体験の作者ですが、少しでも多くの方に楽しんでいただければ幸いです。

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