こころの鍵をあけて

紫川 雫

お願い

1人、暗い部屋で歌う。

それが私の唯一の趣味。

「…」

外を見ると空は今にも吸い込まれそうな綺麗な黒に染まっていた。

「…寝なきゃ…」

そう呟き、ベッドに横になる。

「…おやすみ」

私しか居ないのにそう呟く。

…誰かに私の声を聞いて欲しいからこんな行動を取ってるのかもな…。

そうして私は重い瞼を閉じた。

「(さて…今日はどんな夢が見れるかな…)」

__

息を吸おうと口を開けた。

だが、苦しくてまた口を閉じてしまった。

「っ…」

目を開けると、そこは知らない場所だった。

幸い、目は開けても痛くならないようだ。

「(ここ…どこ?)」

辺りには扉が沢山ある。

私1人しか居ないかと思ったら遠くに人影が見えた。

その者は扉を眺めていた。

「(誰…?)」

私がじっと見ていると視線に気づいたのか、その者がこちらを向いた。

「初めまして、あなたが莉羽?」

「えっ…」

遠くにいたその人は瞬間移動でもしたのかすぐにこちらに来ていた。

「な、なんで…名前」

「ふふっ…何で知っているかって?…いつか分かるわよ」

その人はそう言いながら私の頭を撫でた。

「…あなたは…?」

「私?私は…莉亜よ」

莉亜は私の頭を撫でていた手を止め、私の手を握った。

「莉羽、あなたにお願いがあるの」

「…お願い…?」

莉亜は頷きながら辺りを見渡した。

「莉羽に…この扉を開けて欲しいの」

「…え?」

私は頭にハテナが浮かんだ。

「で、でも…私、鍵とか…ないよ?」

私がそう言うと、莉亜はスっと手を離し私の胸を指さした。

「鍵は、莉羽のこころにあるよ」

ニコッと笑いながら莉亜はフワッと風のように消えてしまった。

「え、ちょ、ちょっと!」

私は焦った。しかし、水が滝のように上から流れてきた。

「!?」

私は避けようとしたが何かが足に絡まって動けなかった。

「(あ…)」

私は水を避けることが出来ず、ずぶ濡れになってしまった。

そして…私はその場で意識を手放した。

__

「はっ!」

次に目を開けると、私の部屋だった。

「(ゆ、夢…?)」

夢にしてはとてもリアルな夢だった…。

「…こころに…鍵…か」

私は服をギュッと握った。

「(…莉亜…私、やってみるよ…)」

私はこころの中でそう言い、着替え始めた。

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こころの鍵をあけて 紫川 雫 @shikawashizuku

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