月夜の半生

ジャックと豆柴

第1話

 月が蒼白く光る夜、茂みを掻き分け走り続ける。森に破裂音が鳴り響くと同時に木々はざわめき、鳥達は羽ばたく。そこには、仲間達の悲鳴も混じり最後の死に目に立ち会う事もできぬまま必死に走り続ける。私達は何故逃げなければいけないのか、何から追われているのか。本能に従うように逃げ続ける中自問自答を繰り返すが答えは見つからず、息を殺しながら朝日が昇るのを待ち続ける。激しく心拍する心臓は恐怖に拍車をかけ、明けない夜を想像させる。

 心身共に震え続け痙攣する瞼に微かに日差しがあたる。夜が明け安堵したと同時に辺りを振り返る。仲間達の姿は1つもなく1人で隠れ夜を免れたのだ。辺りを警戒しつつ匂いを頼りに仲間を探す。乾いた臭いが森の中に充満し、見慣れた景色の中に所々違和感がある。木々が抉れ樹皮が捲れており、踏み荒らされた場所には血痕が残っている。しかし、仲間達の姿は何処にも無く深い森の中私1人だけが取り残された様だった。身を潜めている仲間を探す為私は再び探索を続ける。

 太陽が幾度も昇り沈もうとも仲間の気配はなく、小鳥や小動物がまた暮らし始めている。私だけがあの夜以降変わってしまっている。どうして狩りのできない私だけが残ってしまったのか、落ちてる木の実で喰い凌いできたが限界はもう先である。空腹を紛らわす水を求め彷徨っている時川の方から音が聞こえる。

「154.4(☆%(8(♪=(-,44(2229¥455-」

何かを言っている。しかし、分からない私はただ怯える事しかできない。少なからず見つかってしまった以上もう逃げるとこはできない。私は今それ程に弱ってしまっている。しかし、攻撃される事も殺される事はなくこれを食べろと言う動きを私に見せてくる。警戒しつつ私は肉のような物を口に入れる。飢えとは怖く無心で口に放り込み、喰べ切ると同時に私は眠りに落ちてしまう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る