きょうしゅ

湾野薄暗

1日目 『むかしばなし』

20年前の11/1の話だ。

地元の通っていた小学校の裏には山があった。 標高222mのハイキングコースも備えている、

小学生が遠足で登るような山だった。

当時、小学校3年生の俺とユウキは子供会のハイキング行事でこの山に来ていたのだが、親の言うことを聞かないクソガキ2人でハイキングコースを外れて山を登っていた。ぶっちゃけそれでも山頂に着くぐらい開けた山だ。


「お前、今日が誕生日ってことは家でケーキ食えるしおめでとうってみんなから言われるの良くね!?」とユウキ。ユウキは8月13日が誕生日で今年も夏休みとお盆が重なりバタバタな中でケーキを食べたらしかった。


ユウキとそんなことを喋りながら、ちょうどいい長さの枝を見つけて、それで落ち葉をかき分けながら登っていった。


百足と蛇は怖いので落ち葉を蹴散らしていく。

するとユウキの枝が何かに引っかかった。


「あれ?枝引っかかった」


仕方なくユウキがその落ち葉がこんもりした部分に駆け寄り、何が引っかかっているのかを確かめた。


それは女の人の生首だった。


ユウキの枝の先が生首の目に刺さり抜けなくなっていた。2人で声も上げれず呆然と立ち尽くしている とその枝の刺さった目を無理矢理ぐるんとこっちに 向けて女の人の生首が言った。


「私、29歳で死んだの」


その声を聞いた途端に緊張が切れたのかユウキが叫び声を上げて、親達がハイキングコースから降りてきて生首があり、大騒動になりハイキングは中止、警察もやってきた。


俺はその後1週間ぐらい記憶がないが、 生首は11/1の朝に捨てられたもので、生首の女の人は29歳だったと大人になって知った。


そして2023年11/1。俺は29歳になった。

何となく一人で家にいるのが嫌で、深夜まで飲み歩いてから帰宅して起きたら夜だった。

布団に寝そべったまま背伸びをすると枕の上に何かある。俺の手が当たって転がった音がする。

俺は慌てて電気を点けて、見てみると20年前の女の人の生首がこっちを見ていた。


「私、 29歳で死んだの」


俺はそのまま気を失った。

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