機械人形再生工場

釉貴 柊翔

序章 機械人形再生工場

「四十号、四十号、四十号アリア……」

 ここは機械人形再生工場マシンドールリペアファクトリー。壊れたお人形さんたちを修理する場所。今日はその一部を特別に、皆様に御覧に入れましょう。

ほら、あそこ。何かが起こったみたい。悲しげな声が聞こえるわ。あらあら不思議ね、何も変わってないわ。いつも通り、みんなちゃんと動いているわ。手を止めず、動きも止めず、動作不良バグも起こしてないわ。じゃあなんで、あれは突然話し出したの?もうちょっと様子を見てみましょう。

「ああ……、あなたも壊れちゃったのね四十号アリア……。みんなが、私を置いていく……。あなたも、私を置いて行っちゃうのね、……」

 不思議ねぇ……、あれは何を言っているのかしら?四十号は壊れてなんかいないじゃない。だってほら、今も変わらず動いてる。でもそうね、彼女の「修理」は終わったみたい。おめでとう四十号。あなたもやっとここから出られるわね。大好きな所有者マスターのもとに戻れるわよ。でもあれはまだ駄目ねぇ……。十三号。四十号よりも早くから修理過程に入っているはずなんですけれど……。ごめんなさいね、資金提供者スポンサーの皆様。私たちの工場の成果を今日は見ていただきたかったのですけど、あんな動作不良品バグをお見せしてしまって。でもご安心なさって。あれは例外イレギュラー。他はみんな、直せているわ。ほら、あそこ。四十号をご覧になって。素直で従順。与えられた命令を忠実にこなすお人形さん。きちんと直っているでしょう。あの動作不良バグ品だって、きっともうすぐ直して見せるわ。そうだ、皆様にご信用いただけるように、今からこの工場の修理過程をすべて御覧に入れましょう。そうすればきっと、皆様にもご安心いただけるわ。本当は資金提供者スポンサーの皆様にも秘密なのよ。でも今日はお詫びとして、ここにいらっしゃる皆様にだけは御覧に入れますわ。でもお外では内緒になさって。そうじゃないと私、困っちゃいますから。では行きましょう。まずはじめ、壊れた機械人形マシンドールが連れてこられるところから。


「いや、やめて! 私を所有者マスターのところに返してよ! 私、壊れてなんかないっ!」

 ほら皆様、御覧になって。あの人形ドールも、すっかり壊れてしまっているわ。おかしいですわねぇ、自分が壊れてしまっていることすら理解できないなんて。哀れですわねぇ、あんなふうに取り乱して。皆様もそう思いますわよね? 機械は機械らしく、早く直して差し上げないと。

「いやだ! やめて! 私をそんなところに連れて行かないで! 私を奪おうとしないでよ!」

 あら、工場の職員が来ましたわ。あれを工場に運び込まないといけないものね。でも、大声で叫んだり、暴れまわったりしているから大変そうだわ。全く。壊れちゃってるから自分のことも理解できていないのね。本当に、かわいそう。職員の皆さん、早くそれを連れて行って。あんまり哀れで見てられないわ。

あら皆様、お見苦しいところを見せてしまいましたね……。でもご安心なさって。あんなに壊れた廃品ゴミでも、私たちにかかれば、ちゃんと元通り。人形ドールとして生まれ変われますのよ。では皆様、あれが運ばれた先に向かいましょう。人形再生の第一段階。教育メンテのお時間です。

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