第7話 迷いの森のモンスター達
「俺はなんてことをしてしまったんだ。」と頭を抱えている。
いやこれは不可抗力、そうこれは不可抗力だ!童貞の反応だと思うなら笑ってくれ。
ノエノスを後眷属化したことによって身体が超回復したように治っていった。
そこはファンタジーだと思いながら納得する自分がいる。
ちょっとは異世界に慣れてきたのだろうか?
息遣いも戻り、安静にしていればたぶん意識を回復するだろう。
ステータスを見れば眷属 竜人(ドラゴニュート)なる種族になっていたりする。
外見は全然変わってないのに、ステータスなどが軒並み上がりレベルが1に戻ってい」たりしている。もしかして進化の影響とかか?
考察なんてうまくは出来ない。
「くぅーん。」と声を出す子白狼。
「さて、よっこいせ。」と子狼の背中にぐたーっとしているノエノスをなんとか乗せることができている。大丈夫かと思ったが頑張っている子狼がいた。
「もぉもぉ、食べられないよぉぉ。でもぉ、もうっちょとぉぉたべたいなぁぁー。」とか幸せな寝言を言っているが知らない。
うん聞かなかったことにしよう。
仕舞には子狼の毛をむしゃむしゃと食べそうになっていたので、キールモンキーの肉を口に入れてやるとすぐに食い切ってしまう。
「でへへ。美味しい。」とか言って、涎を子狼に垂れ流していたりする。と言うか寝ながら食べていたんだが、恐ろしいこれが異世界の常識なのかとショックを受ける。
どう反応していいかわからない子狼がいた。そしていつの間にかテイム状態になっている。いや俺のではなくノエノスのだ。
「まぁ、いい。さて。」そう言ってこの森に潜む目が所々から俺達を見ている。
「俺が援護する。街までその娘を運んでやれるか?」
「わふぅぅ。」わかったってことだろうか。賢い狼だ。
そう確認するとイノシシのモンスターが襲ってくる。
「ぶもぉぉぉぉ。」とその攻撃を真正面から受け鼻先を殴って気絶させた。
ぴゅーと消えて牙なんかが落ちている。
「意外に戦えるな。さて、来いよ。」と手招きしながら挑発する。
まるで分っているかのように鳥のようなものや、小型の恐竜っぽいものまで襲ってくる。
それらを捌きながら、なんとか子狼を逃がした。
取り出したショートソードで切ろうとして全然切れなかったりする。
そうして剣が折れたのは仕方ない。
だって剣の扱い方なんて知らないからね。
それより殴った方がダメージが入り、倒しやすいことがわかった。
「この世界の基準がわからなくなったな。」
何回か攻撃を受けたが全然ダメージが入っていない。
過信は禁物だが防御だけなら無敵なのかもしれない。
ある程度モンスターを倒すと、のっしりのっしりと大きなクマが姿を現す。
「ぐぁぁぁぁぁぁー。」と雄たけびを上げる。
「ほう、ボス戦かー。」何となくのんびりとそんなことを言ってしまう。緊張感なんてもうない。
「ぐぁぁぁぁぁ。」とさらに威圧してくる。他のモンスターが逃げるように消えていった。
よく見れば右腕が折れているように見える。
「手負いのクマか。」鑑定をすればキラークマ(変異)とか書いてあったりする。
何度も爪によるひっかき攻撃をしてくる。
爪で引っ掻かれた木が、吹っ飛んでいたりする。
「おおう、怖い、怖い。」と思わずつぶやく。
次の大ぶりの攻撃を躱し、カウンター気味にかかと落としを頭に入れ熊はピヨピヨマークが出るくらいに目が回っている。後はたこ殴りにしていく。
痛そうではあるが、やらないとやられるのが自然の掟のようだから殴る。
ある程度殴り終えると熊の姿が消え熊肉とリングが落ちていたりする。
リングは鑑定で調べたがそこそこ防御力が上がったりするらしい。
俺には微々たるもだがな。
「さて、戻ろうかね。」
辺りを見ると朝焼けのような光景が広がっている。
そんな光景を見ながら街へと、いやある程度ドロップアイテムを拾った。
売ってお金にするか、さらに若干焦げ付いている薬草をゲットする。
さっきのファイヤーボールのせいだろうか、まぁいい。
「これでクエストは一応クリアだな。」
街の中を進む。そこから冒険者ギルドに入るとなんだか武器を向けられた。
なんだ?何かしたか?
よく見れば防具を剥ぎ取った奴等がいやがる。
受付まで来て机の上に乗っかり座る。
「これを。」と言って依頼書と一緒に少し焼け焦げた薬草を出す。
「これは?」
「少し燃えたが薬草だ。」
「いえ、そう言うことではなく。」受付嬢がまわりを見る。
「やれやれ、この状況をどうしたらいいのか?」困った顔をする。
メットをしているようなものなので表情を現すことは出来ない。
「お前に防具を盗られたって言う。冒険者がいるんだ!」
「そうだそうだ。返せ盗人!」
自分達の罪を棚上げにして、そんなことを言ってくる。
「ほう、自分たちで喧嘩を売っておいてそんなことを言うのか?」と周りの人間が押し黙る。
「それだけじゃねぇ、俺達のアイドルミコミをイジメたって聞いたぞ!」
「領主様のお嬢様もお前が攫ったってミコミが言っていた!」また冒険者たちが騒がしくしている。
「俺たちにも優しくしてくれるミコミに間違えはない!?」
「あの駄メイドが!」思わず悪態を付く。
あの時一発入れておけば良かった。
あのミコミというメイド、冒険者に取り入って扇動する才能でもあったのかもしれない。にししと言う顔が頭をよぎる。なんだか物凄くムカついてくるな。
両者の睨みあいから、一触即発の状態だった。
「はいはい、そこまでにしてください。」パチパチと手を叩く受付嬢。
「君たちも解散して、いつまでも酒飲んでないで街の復興でも手伝いなさい。」指示を出す。
「だけどミオンちゃん。こいつが!」と囲まれている冒険者全員に指を指される俺、ずいぶん嫌われたものだ。
「はいはいわかりました。貴方たちが負けたって事がね。悪い風にしないからね。」
ウインクしながら、営業スマイルで声をかける。
「むむむ。」とか言っているが、どうやら武器を収めて引き下がったようだ。
ちゃんとスペアは用意しているようだ。
「部屋でお話しできるかな?」
そんな風に聞いてくるので、頷くしかないだろう。
冒険者はドナドナされていく鎧の男を気の毒に思ったり、いいざまだと思っていたりする。
「まずは出来れば襲ってきた冒険者の武具なんかを返してもらいたいのだけれど・・・。」そう下手に出ながら聞いてくる。
まぁ別に返してもいいだろうと、どさどさと出していく。鑑定によるとそんなに価値があるとは思えない。耐久度も手入れも行き届いていないようだ。それに匂いがな。
「沢山あるわね。それに収納ボックス持ち?」と呆れたり驚いたりしている。
受付嬢のミオンは冒険者の匂いに慣れているのかそんなものだと思っている節がある。
「ふん、それだけ冒険者が襲ってきたんだ。躾がなってないんじゃないのか?」呆れたようにそう言った。
「そもそも新人冒険者をたこ殴りにするなんてどうなんだ?」
「はぁー私に言われてもね?ボコボコにされてそれで離れていく冒険者なら、その程度だって風習が辺境にはあるのよ。」そう言って困った顔をする。
「上にでも言っておけ。」と言ったが。
「あーそれがこの前のゴブリン襲撃で、ギルドマスターが逃げちゃって、あはははは。」と笑うしかないらしい。
「アイツ!ゴブリンにでも食われてればいいのに!」と過激な発言をする。よほど激務なのか目の下にクマができている。
「なるほど。大変だな。」と同情しておいた。
「そうなのよぉぉ。どうしたらいいのかわかんないぃぃぃ。」とか頭を抱え号泣していたりする。
「実質ここの責任者が私になってるのが一番の悩みなんですぅぅぅ。」と愚痴る。
「ああ。」そこから彼女の愚痴を聞かされ続ける。
「仕事が溜まってるのぉぉぉ!」
「手伝ってくれる人がいないのぉぉぉ!」
「もうどうにでもなれぇぇぇぇええ!」悲痛な叫び声だった。
「すまないが、少し用事があってね。」立ち上がる。だいぶ眠くなっている。
まだこの体は赤ちゃん竜なのだ。
「ああ、申し訳ないです。それとなく冒険者に言っておきます。」立ち上がって見送りまでしてくれる。
愚痴を聞いていたりして、ストレスが少し晴れたのかもしれない。
「ああ、それとこれを買取でお願いする。」とキラーモンキーの肉を出す。
「これは?キラーモンキーの?」と目を丸くして驚いている。
「ああ、なんとか倒せたのでな。買取を頼む。」と10匹分くらい出しておいた。
「あっ、あはい。」と驚きながらも早く査定しようとする。
「金銭は次でいい、ではまたな。」そう言ってこの部屋を後にした。
「あれれ?キラーモンキーってAランクの群れにでもあったの?それにどこから出したの?」そんな声が聞こえてきたが無視をした。
未だ戸惑うミオンを残してゆっくりと部屋から出ていくと、何人かの人間が臨戦体勢で待っていたりしている。
それでも俺のステータスに及んでいない。
それらを無視して冒険者ギルドを後にした。
付いて来る冒険者がいる。それらを簡単に巻きながら、屋敷の中に帰ってきた。
意外にくっそ眠たかったりする。
「わぁぁぁぁー。」とあくびをしながら、4足形態で元の体型に戻りながら、しかし指の数は5本と増えたままだ。不自然か?まぁいいやーと思いながら、パタパタ飛びながら、何かあってはいけない女にあったような気がする。
「ふわぁぁー。」と大きな欠伸をした。
眼の前にいるのは、少し年配でメイド服を着ている。
若いころは結構美人だったかもしれない。
出会ってしまって方向を変えようとするが、そこに立ちはだかる女メイド?いやなんかファンキーメイドみたいな格好かな?俺にもよくわからない。
メイドのスカートの丈は短くお臍まで出している。
右側が長袖で所々穴が開いていたりする。
左側が半袖になっている。魔改造しているのだろうかうか?
そんなことを思っているのがいけなかった。
そう俺は今、ヤバい奴にキャッチされてしまった。
「おおう、こいつがスミンが言っていた。ペットか?」
「はぁぁぁ、せめてクロエ様にテイムされた竜とか言っておきなさい。」
「はいはい。」
二人のやり取りが遠くなるのを感じて、瞼の限界を迎えた俺は眠りについたのだった。
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