第4話 母と姉と妹
「それで、魔物の卵と言うことだけど?」女の威圧を受けて一瞬凍りそうになるがなんとか堪える。
「失礼します。」と言って背負っていた卵を下ろす。
布に包んでいたそれを机の上に置く。横向きになっている。
「ふむ?」と言って観察している。
「・・・。」と私は頭を下げたままあげない。
「大儀、後で少ないながら報酬を払う。セバスチャンお願い。」
そう言って指示を出す。隣にいた老執事が頭を下げた。
「ありがたき幸せ。」そう言ってさらに頭を下げるカルマ。
これが貴族との最低限のやり取りだ。
カルマと老執事は部屋から出ていく。
「さて、この卵どうしようかー。」と投げ出し気味に椅子を倒しながらノエノスとフレイザに聞く。
「お母様流石に行儀が悪いですよ。」と注意するノエノス。
「そうです。いつまでも子供では困ります。」抗議するフレイザ。
「だってぇぇ。」と抗議の声をあげてムスッとする。
「この領地最悪ぅぅぅぅ!なんでこんなところにきちゃったのぉぉぉ!」頭を抱え左右に振るラミーナ、しまいにはバンバンと机を叩きまくる。
「王都が良かったぁぁ。王都がよかったよぉぉぉ。」泣きじゃくる。
「お母様クールキャラが崩壊してます。」
「お嬢様・・・。」と頭を抱える両者。
「仕方ないでしょう。夫の昇爵一年目でこんなに治安が悪くなるなんておもわないんだからぁぁぁぁー。」と投げ出す。
「それで、この卵どうするんですか?」
「そうなのよね。どうしようかねぇぇ。」と頭を抱える。
「変に孵化させて制御できないとかなったら被害が出るし、テイムとしたとしても食費がかかりそうなんだよね。我が領にそんな余裕はないが。」指を顔に当てながら悩んでいる。テイムした子が馴染んでくれたらこの領にプラスになる。それは将来性作るという行為では大事なことだ。
少し考えながらノエノスが何か考えがあるみたいだ。
「お母様。その卵をクロエに見せてあげたいのですが。」
驚いた顔をして、ちょっと考える。
「うーん。それもありかもしれないけど、クロエの病状が悪化することだけはしないようにね。」念を押す。
「はい、お母様。」そう言って卵を受け取り、この部屋から出ていく。
「クロエの様子はどうなの?」真剣な顔でラミーナが聞く。
「それは時々良くなっては起き上がることはあっても立つことは出来ないままで、ただこのまま行くと長くは生きられないと言うのが医者の見立てです。」
「そう、クロエに好きにさせておいて、忙しくて中々行けれないから、スミンによろしく頼むって。」と心配しながらも優先順位が領政のことになるのは貴族故なのかもしれない。本当なら付きっ切りで看病したいのに!
「はい、わかりました。それでは私も失礼いたします。」そう言ってお辞儀をして出ていく。
それを見送る。
「本当に病なのかしら?」怪しそうにしながら、目の前にある書類を片付け出す。
「やっぱり王都に居たかったぁぁぁ。」と嘆きながら作業をする姿がしばらく確認された。
「はぁぁ、いつまでもお嬢様気分でいてもらっては困るのですがね。」そこから誰かが立ち去る影を見る。
それを見ないようにしながら、ここを立ち去ったフレイザ。
「あれ?さっきより大きくなったかな?」ノエノスはちょっと大きな卵を両手に抱えながら、ゆっくりと大好きな妹クロエの部屋に向かっている。
「あらノエノス様どうされました?」そう聞く、廊下を歩いている妹の専属メイドスミン。
「この卵をクロエに見せようと思って!」そう言って掲げて見せる。
「流石ノエノス様、こんな重そうな卵も軽々持ち上げるんですね。」と尊敬しながらもこの卵大丈夫なのかと思い引いていたりもする。
意外にメイドなのに砕けた話し方をする。そんなことを許す優しさがノエノスにはあった。
「ははは、意外に軽いよぉぉ、持ってみる?」
「いやぁぁ流石に無理そうですぅ。」と焦りながら断る。
「ふふふふふ。なさけない。そんな卵も持てないなんてメイド失格に違いない。ミコミは持てる。」人差し指を振り、キラーンと目が光る。
「まさかやる気か!」とスミンが驚く。
「じゃあ、ミコミ渡すね。」そう言って、卵を持ってミコミの前に持って行く。
「ふん、こんなもの楽勝ですよ。余裕、余裕!ふーんんんん。」と持ち始めると顔が赤くなり始める。
バランスが崩れそうになりながらおっとっと成ったりしている。
「この私がぁぁ卵ごときにぃぃぃぃ!」一体何を張り合っているのかわからない。
「そうなるよね。」とスミンが煽ったりしている。
「あらら大変。」とかおっとりしながら声を漏らす。
「ミコミの実力をぉぉぉぉ。」と後ろで火が燃えているイメージ。
ぐてと倒れてそのまま卵に乗せられる。
はたから見ていると卵に負けている女に見える。
「ぷっー。」と思わず噴き出すスミン。
「笑わないでぇー助けろぉぉぉー。」そんなこと言ってジタバタしていた。
「大丈夫?」と近づいていくノエノス。
「よいしょ。」と言って大きな卵を持ち上げる。
「あははははっ。卵に負けるとか、腹痛い。」と未だ笑っているスミン。
「別に負けてないもん。」と抗議する。
「二人とも喧嘩はやめて、仲良くしようね。」
「いやでも。」
「ぷぷぷ。」なんとか笑いを我慢しようとして無理そうだった。
「もう。」とぷんぷん顔が可愛かったりする。
「やめようね二人とも。」この領の騎士団をまとめる団長は迫力がある。
その名は他国にも響き渡っているとか・・・
「はい。」と二人の声がこの時は重なるのだった。
流石に恐いノエノスに睨まれて、二人とも仕事モードに入った。
されは逆らってはいけない人をわかっているかのやり取りだった。
ノエノスの後ろについて歩く二人のメイド。
その二人の目がビリビリと睨み合い、火花を散らしているとは知らずにノエノスは呑気に少し下手くそな歌を口ずさみながら歩く。
到着したドアをスミンがノックする。
「クロエ様、ノエノス様がお越しにになりました。」
「はいどうぞー。」と伸びがあるが弱々しい声が聞こえる。
その言葉を待ってドアを開ける。
身体を起こそうとするクロエ。
「クロエそのままでいいよ。」と言うけど。
「だけど姉さま、ごほごほ。」と起き上がりながら咳き込む。
それを支えようとするスミン。
顔が青白くなっている。
今日は体調が悪い日だったのかもしれない。
「今日はやめとこうか?」そう聞く。
「いえ、大丈夫です。それよりもー。」と顔が卵に向く。
「それはなんですかー?」体調が悪い中、卵が気になって仕方ないと言う顔をしている。こう見ると年相応な少女のように見える。
「これは魔物の卵なんだよ~。」と言った。
「そうなんですかー?」首を傾けながら聞いてくる。
「そうだよー。でも中から何が生まれてくるかわからないから、どうしようかって皆と話しているんだよ。」
「孵すんじゃないのー?」疑問に思って聞いてくる。この疑問顔が可愛く見えてくるから不思議だ。
「うーん、でも卵から危険な魔物が孵ってくるかもしれないからなぁー。料理して食べたりしないとね。」
「うーん。そうなんだー。」
何かを考えるそぶりをするクロエ。
「もし良かったら。私に育てさせてくれないかな?」そんなことを言い出すクロエ。
「えっ、でもダメだよ。身体もあまり良くないし。負担になっちゃうよ!」真剣な顔で止めてくる。
「クロエ様、私も反対です!もしクロエ様の体調が悪くなったらと思うと・・・。」
額を抑えながらスミンが暗い顔をする。
「ごめんなさい。でもお願い育ててみたいのー。」真剣な顔で見つめてくる。この顔に昔から弱かった。
「でもぉぉぉ。」と葛藤するノエノスがめちゃくちゃ迷っている。
「お願い、お姉さまー。」
段々と身体の調子が良くなってきたのか顔が赤くなっていく。
「お願ーい。」
手を組んでお願いのポーズをされて断れるほど・・・妹好きの姉は断る言葉を見つけられずに・・・許可するのだった。
「わかったから、絶対に無理しちゃダメだからね。」と手を握って言う。
涙が出そうになっていたりする。
「うん、わかったー。」そう答える。
「どんな名前にしようかなー?」とそんなことを考える妹を見ながら幸せな顔をする姉。
姉妹の会話を楽しみながら、時間が来たので部屋を退出して行くノエノス。
それに付いて行くミコミ。
「ノエノス様。」廊下でミコミが話しかける。
「何?ミコミ。」
「クロエ様の容態なのですが、あまり長くないと奥様とメイド長の会話を聞いてしまって・・・。」
それを聞いて、ミコミの首を思わず締める。
「なに、どういうこと?」締めながら問いただす。
「痛い、痛いでぇーす。」ともがきながら、手を離してもらおうと抗う。
「はっ!ごめんごめん。」といきなり手を放した。
「いや、大丈夫です。さっき言ったのは本当の事なんです。でもたぶん二人に聞いてもはぐらかされるからぁ、ノエノス様にしか話せないんです。げほげほ。」と咳き込む。
「くっそー。」ドンとう言う音がして壁に罅が入る。
「ひぃぃぃぃぃ。」と声をあげるミコミ。たまにこう言うことをする未だになれない。こんな攻撃を食らったらミコミはミコミはとんでもないことになると顔面蒼白になる。
いきなり大股で歩き出すノエノス。
「ど、何処に行かれるんですかぁ?」
「迷いの森に行く。幻の秘薬の材料を取ってくるんだ!」そんなことを言ってミコミを置いて行ってしまった。
そこにはほくそ笑むミコミがいたと言う。
恐らく迷いの森に向かってそこで・・・
「ふっ計算通り、我が連合国の邪魔になるノエノスを迷いの森のモンスターの餌食にするために、ウルトラエージェントスパイのミコミに掛かればこのくらい造作もない。」
そんなことを言ってシェーのポーズを決めながら目をキランと光らせていたりする。
「ふはははは。」と高笑い。
「時代はこのわたしぃの時代!」なんか勝利のポーズをしている。
「痛!」そこからずっこけてダメージを負っていた。
「はぁー。」
そんな様子を影で見ながらどうしたものかとスミンが思っていたりしていた。
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