イトグルマ

六原

ある大学生の物語

 少し前の話になるが、急に物が無くなることが何度もあった。


 無くなったのだ。忘れただったり、無くしただったりではない。


 数週間前のことだ。いつものように幻湯、家から一番近い銭湯に行った時にそれは起こった。


 家から持って行ったシャンプーのボトルが無くなった。確かに持って銭湯から出たはずなのだ。持って出たはずなのに、家に着いたときには、鞄の中のどこにもなかった。


 忘れただけだろうって? そんなことはない。ちゃんと引き返して確認したんだ。


 けれど、浴室内にも脱衣所にも自分が使ったロッカーの中にも無かった。番台さんに聞いても無いと言われたんだ。いまだに見つかっていない。本当に不思議だ。


 それだけじゃない。その翌日には、冷蔵庫に入れておいたプリンが無くなった。


 同居人なんて一人もいない六畳一間に置かれた冷蔵庫の中からものが消えるなんてあり得ない話だ。。


 けれど、実際に無くなったんだ。勿論、僕が食べたわけではない。


 その次の日には、僕の気になっている女性とのLINEが消えていた。消えていたというより、送っても何も帰ってこなくなったというのが正確かもしれない。良い感じに関係が進んでたのに……


 ただ、こうした事態は三週間前くらいに突然おさまった。自分でも変だと思うのだが、急に「おさまった」と感じたんだ。


 それ以降はそんな不可思議なことは起きていない。


 きっとあれは、なにかの仕業だったに違いない。絶対にそうだ。


 嗚呼、嘆かわしい。実に嘆かわしい。

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