カラスのたまご お題:元気な娼婦
「ねえねえ、あの男はどうだったのっ」見習いのアリサが問いかける。
「アイツは全く駄目だわ、金の羽振りも良くないし、たった一回で果てちまうなんて貴族のくせにだらしないったららありゃしない」一番古参のチョウコが答える。
ここ、白鴉亭は立ち並ぶ娼館の中でも皇族がお忍びで来ると言われるほどの高級娼館だった。舞台の裏のメイクルームでアリサは衣装や部屋の掃除をする、客を取るにはまだ幼い少女であった。朝日は紫煙と香水でゆらめいた空気を清楚に変えるために懸命に照らしていた。
「あっミカラさん。お疲れ様でした、今日も素敵です!」
その部屋に体の全てが卵の殻で出来ているような儚げな少女が帰ってきた。ミカラはこの娼館の中で一番の稼ぎ頭だった。艶やかな黒髪に主張が少ない薄い胸。どんなに下品な恰好をしてもその美しさと純粋さには敵うことが出来なかった。
そこに男たちはそそられ、欲情していた。現に今のミカラの恰好はカラスのような黒いドレス。それもスカートの全面は三角形に切り取られていてビキニのような小さいショーツが露わになっていたが、彼女は気にする素振りも見せず、冷たい顔のままだった。
「じゃあ、私は部屋の掃除に向かいます。今日もミカラさんのお姿を見れてアリサは幸せでした」
そう言って彼女は部屋から出ていく。チョウコは笑顔を作り、アリサを見送るとミカラを睨む。
「あの子、いつまでここに置いとくつもりなの」チョウコはミカラを問いただす。
「別にいいでしょ、あの子も孤児なんだから」
「そういう問題じゃないわ」
アリサは私にとって希望なんだから。ミカラは心の中で答える。ここから生み出される下らない循環から逃れるための手段なのだ。
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