ある台風の夜に助けた猫のおかげで、お隣の超絶美女とお近付きになれた…その日までは不幸が重なっていた男の物語
ALC
第1話ある台風の夜に…猫を助けただけ
八月も終わりに近付いてきたある日のこと。
「本日は夕方より大雨の予報です。台風六号が急激に拡大し接近してきております。近くにお住まいの方々は雨戸を閉めるなどの対策をし不要不急の外出はお控えください」
目覚めたのが昼過ぎだった僕はそのニュースを目にしてすぐに部屋の雨戸を閉めに向かう。
話はまるで変わるのだが。
現在、僕の年齢は二十五歳。
両親も兄弟もこの世にはもういない。
不幸が続いた僕に残されたのは、この一軒家と生命保険などで家族が僕に残していったお金だけだった。
一軒家に家族の存在もなく一人で暮らしている僕を周りはどの様に見ているだろう。
不幸な男性と映っているかもしれない。
だがそんなことは関係なかった。
海が直ぐ側にあり、コンビニもスーパーも近くに存在するこの立地はかなり上等な物件だった。
だから引っ越すつもりもない。
両親と兄弟との思い出の詰まったこの場所を手放すつもりは毛頭なかった。
閑話休題。
雨が降り出す前に夕食の材料と飲み物のストックなどを買いに行こうと外に出る。
車に乗り込むとスーパーで買い物を済ませて帰路に就く。
夕食の支度をしながらテレビをラジオ感覚で流していた。
十六時を過ぎた辺りから雨が降り出してきて、それは次第に大雨へと変化していく。
今年の台風もかなりの勢力で襲ってきて軽く嫌気が差した。
雨の音に紛れて甲高い鳴き声の様なものが聞こえてきて玄関の扉を開いた。
外玄関には灰色の猫が雨宿りをしていて玄関を開けてやると猫は家の中に入ってくる。
そのままリビングのソファで丸くなった猫を横目に僕は夕飯の続きを料理していた。
ナァ〜と鳴く猫を見て、もしかしたら空腹なのかと思い昔何処かで聞きかじったような知識を総動員させて猫でも食べられるものを作ってあげる。
受け皿に牛乳を温めて入れてやると猫は嬉しそうにそれを舐めていた。
分け与えたご飯も嬉しそうに食べている猫を見て僕は家族が恋しくなる。
あの日々を思い出して涙が流れそうだった。
そんな僕を見てか、猫は膝に乗ってきて涙をペロッと舐めてきた。
それに軽く苦笑すると猫にまで心配されている自分が可笑しく思えてならなかった。
皿洗いを済ませて台風を避けるように、現実から目を背けるように再びベッドに潜り込む。
猫は僕の後をついてきてベッドに入ってくる。
一緒に朝までお互いに暖を取ると翌日を迎えるのであった。
インターホンの音で目が覚める。
眠い目を擦って玄関に向かうと扉を開けた。
そこには絶世の美女と近所で噂のお姉さんが立っていて眠気は一気に冴えてしまう。
「どうしましたか?」
「朝早くにごめんなさい。昨日からうちの猫が居なくて…」
美女はチラシのようなものを僕に見せて続きの言葉を口にする。
「もし見かけたら…」
そう言いかけた所でリビングから顔を出した件の猫は飼い主のもとへと歩いていく。
「昨日の台風に耐えられなかったんですかね。外玄関で雨宿りをしていたので家に入れたんですが…余計なことをしましたかね…」
「いいえ。うちの猫を助けてくれてありがとう。何かお礼をさせてください」
「お礼だなんて…」
「何でもします。猫は家族も同然なんです。家族を助けられたらお礼ぐらいして当然ですよね?」
「まぁ…そう言われれば…」
「それに永瀬さんは最近…外に出るのも少なくなりましたよね?昔はあんなに活発だったのに…」
「あぁ〜…そうですね…家族を失って半引きこもり状態でしたから」
「小学生の頃、一緒の学校に通っていた記憶はありますか?中学、高校はまるで被らなかったので関わりも少なかったですけど…私を覚えていますか?」
「えぇっと…過去の記憶はわかりませんが…星宮さんのことは噂で知っています」
「噂?何か悪い噂じゃないよね?」
「えぇ。絶世の美女だって。そんな噂です」
お互いに苦笑するように会話を進めると彼女は最終的に猫を抱いてチラシを渡してくる。
「そこに連絡先が書いてあるので。必ず連絡くださいね?」
その社交辞令を真に受けるわけもなく適当に頷いていると彼女は少しだけ拗ねたような表情を浮かべた。
「絶対ですよ!?連絡くださいね!」
そうしてこの日から僕こと
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