片思いだと思っていたらエルフのつがいでした。
ぷり
第1話 ■内気な娘
私の名前は、アルメリア=ヒース。
ヒース男爵家の長女で、現在王立学院中等部に通っている。
年齡は12歳。
母と同じ聖属性魔力の持ち主。
私と二つ下の妹は母親にそっくりだ。
兄弟は年齢順に並ぶと、茶桃桃桃茶みたいな色合いだ。髪色が。
兄、私、弟、妹、弟。…産み分け完璧じゃない?
そして、きょうだい全員聖属性持ちな為、我が家は男爵家にも関わらず非常に注目されやすい。
あまり言うのもはばかられるけれど、容姿も優れているし、ヒース領は錬金術師の家系で有名であり、最近では領民を募集していないのに、それを希望する人が増えてきている。
また、現国王がたまにお忍びでやってくるくらい、うちの父を好いている。
正直そっちの気があるのでは…?と疑いたくなるくらい執着している。
「昔…オレがあいつの大事なアレを奪ってしまったから、恐らくそれが原因だとおもう」
父が疲労した顔で母の胸につっぷすように抱きつく。
「ああ、アレね……よしよし」
アレって何!?
「いつまで、まとわりつかれるんだ……」
「まさかこんなにしつこいとは私も思わなかったよ…アレをバラバラにしないで、こっそり返しても良かったかもね…」
母が父を抱きしめて、ヨシヨシしている。
……子供の前で。
……この人たちは良い年齡をして子供たちの目の前で何をやっているの?
TPOというものを考えたことがないのかしら?
我が親ながら、ちょっとこういう時は呆れた目で見てしまう。
「あいつらは昔からそうだよ。諦めた方がいい。ノーム、頼む」
アドルフのじいじはそう言ながら、土精霊のノームにトンネルを掘らせる。
そういうとノームが、魔石洞窟を掘り進める。
じいじは国に内緒でここで魔石をたまに掘っている。
大きな声では言えないが、これは法律違反らしい。
私も子供の頃からよくお手伝いしたり、魔石堀して遊んだものだ。
それにしても、じいじは…若い。まだ20代に見える。
父さんも母さんもなんだよね。もし遺伝なら私もそうありたい。
「……そうだな、変わらない」
フ……、と優しく笑うエルフのギンコ。
「ギンコも付き合い長いんだよね。たしか」
「ああ」
彼はじいじと仲が良いらしく、ヒースにある人工森に住んでいる。
人工森はじぃじが作った森で、普通の森とは違って全体的に蒼っぽい。
ギンコはそこに自分で小屋を立てて住んでいる。
そして、その森には――異界への出入り口であるゲートがあり、なぜかその鍵を我が家が保管している。ホント、なんで…?
ギンコも私にとっては親みたいなものだ。
子供の頃からお世話になっている。
遊んでもらったり、精霊魔法を教えてくれたり。
エルフなだけに、全然見た目が変わらない。
一体何歳なんだろう。
国王様の奥様――王妃様が230歳上のエルフらしいけど。ギンコもそれくらい生きてるのかな。
私は家族の中でもこの二人といる事が多い。
私は喋るのは苦手だけれど、その実やることはお転婆で、小さな頃から、じいじとギンコにくっついてダンジョンへ冒険へ行ってた。
私なんて小さくて足手まといなはずなのに、二人共いつも文句の一つもなく連れて行ってくれた。
私はこの二人が大好きで、ずっと二人といたかったんだけど。
「いい加減、一度くらい学校行け」
父さんのこの一言で、12歳からは学院生活を送っている。
実は、他のきょうだいは既に小等部から学院に通っているのだけれど、私は学院には興味がなくて行ってなかった。
勉強はじぃじが教えてくれたし。
学院に通うようになってしばらくは、私はいつも飛ぶように学院から帰ったけれど、じぃじとギンコがダンジョンに行く時間とは合わなくて、前のような生活は送れなくなってしまった。
「お前は少し同じ歳の子たちと交流してみろ。15歳までだ。それ以降は自由にしていい」
父さんなりに、私を心配してるんだろう。
学院に行かないかわりにちゃんと勉強はしていたんだけど、それだけじゃ駄目だったみたい。
私は仕方なく頷いた。
「どうしても合わなかったらやめても構わないが、すこし頑張ってみないか。おまえ、うちの会社に就職したいって言ってただろ。会社に入るなら少し人との付き合い方を学んでこい」
「わかったよ…」
……じいじみたいに、仕事部屋もらってそこに引きこもる仕事がしたかったんだけど。
それ言ったら怒られるかな。
もしくはそれでも行けって言われるのがオチだよね。
父さん怒ると怖いから、ちょっと言いづらい……。
しょんぼり気味の私に、母さんが私をギュッと抱きしめて言う。
「リア、辛いことあったらすぐに言うんだよ」
「うん……」
不安だな……。
頑張って行ってみた結果、私は友達が作れず、クラスで孤立した。
……何喋ればいいんだろう。
両親には言ってない。
授業は簡単すぎて退屈だし、じぃじの授業のほうがよっぽど楽しい。
じぃじに教えて貰いたい。
初めてのテストで、一位をとってしまい、悪い意味で目立ってしまったし。
家では褒められたけど…今度からはもう少し順位落とそう。
目立ちたくない。
お昼もいつも一人で食べている。同年代の子と何を話ししたらいいのかがわからなかった。
話しかけてくる子がいないわけじゃないんだけど、いわゆる空気読めないっていうかノリがわからないっていうか。緊張して固まってしまって、うまく喋れない。
家族となら普通に喋れるのに、どうしてこうなっちゃうんだろう。
ダンジョンでじぃじとギンコとピクニックみたいにして食べてたのが恋しい。
すごく寂しい…と思った時、ギンコの顔が浮かんだ。
それがキッカケになって、事ある事にギンコの顔がよく浮かぶようになった。
ギンコは物静かな方であまり会話はないんだけど、傍にいるととても落ち着く。
……これは。これってひょっとして。
自覚してしまったら、今度は会いたいのにギンコに会わないように行動するようになってしまった。
土日にじぃじが、久しぶりに一緒にダンジョン行くか?とか誘いに来てくれたけど、
学校の友達と約束があるから!と嘘をついた。
じぃじは嬉しそうに言った。
「そうか、友達できたか。よかったな。また誘うから楽しんでこいよ」
そしてずっと私が断るから、じぃじが声かけてくる数も減った……。
じぃじ、ごめん!
とっても行きたいんだよ!! でも、ギンコのこと思ってるのが、恥ずかしくて、悟られたくないの!
ギンコは精霊の動きが視えるから、何かしら私がおかしいって思うかもしれないし。
私は土日も、一人で街へでて時間を潰すようになった。
なんでこんな事になっちゃったんだろう。
図書館で本を読んでるフリをして過ごす。
公園で図書館で借りた本を読んでるフリをして過ごす。
…実は家の近くの図書館の本はほぼ読み切っている。
…つまらない。
そして私は、少し遠くの図書館に私は足を伸ばした。
ブルボンス図書館。
ブルボンス公爵家の経営する図書館らしい。
父さん達には、ブルボンスには絶対近寄るなって言われてるけど、図書館なら平気だよね。
昔、母さんがブルボンスのココリーネという女性に拉致監禁されたから、という話しは聞いたし、私も当時の記事は読んだことがある。
なんで拉致されたのか、と聞いても大人になって秘密が守れるようになったら、とまだ詳しい話は教えてもらってない。
「わ…広い」
実は、名前がブルボンスってことで、この図書館は来たことがなかった。
あ、読んだことないものが沢山ある。
私は感動して、パラパラと本をめくる。久しぶりにドキドキした。
せっかくだからゆっくりじっくり読まないと。
私は他の人と記憶の方法が違うらしく、本を読むのがとても早い。
だから地元の図書館のものは、興味あるものもないものも、全部読み終えてしまった。
それはともかく……さてと、何から読もうかな。
私は適当に数冊、持てるだけ抱えた。
「よ………」
ちょっと欲張りすぎたかなぁ。前が見えない。
「おいおい、大丈夫かよ。欲張ってとりすぎだろ」
本が軽くなって前が見えた。
「半分もってやるよ。どこに座るんだ?」
声の主を見ると、ふんわりした金髪の男性が本を数冊私から取り上げていた。
「あ、ありがとうございます。席はどこでも…じゃあここで。ありがとうございました。」
私は手近な席に自分が持って本を置いた。
「なんだよ、本の種類バラバラだな」
その人は私の横に座ってきた。……ええ、ちょっと困る。
「そうですね。……」
私はどうしていいかわからなくて、黙ってしまった。
どうしたらいいんだろう。
「桃色の髪……」
「え?」
「いや、昔の知り合いが桃色の髪だったから懐かしくてな」
そういえば、この人、父さんと母さんと同じ年齡くらいに見える。
父さんと母さんの知り合いかな?
「プラムって知ってる?」
あ…。
「……えっと、母です。あなたは…」
「やっぱな~。…まじかよ、プラムにクリソツじゃん。俺はリンネっていう。ただの平民だよ」
平民か…。父さんと母さんは孤児だったから、平民の知り合いもいたかもしれない。
「そうなんですね」
だからといって、知らない人なのは変わりないし、何話したらいいかわからない。
早くどこかへ行ってくれないかな…。
「お前の名前は?」
「え…えっと」
これ、答えていいのかな。平民の人だから断っても良いと思うけど、父と母の知り合いってなると万が一失礼にあたったら悪いし…。
名前答えるくらいなら平気かな?
「アルメリア…です」
「お前も聖属性あんの?」
「えっ…」
母のこと結構知ってるのかな?
「…ええ、まあ」
「へぇー……」
あっけらかんと言う。
この人は印象が良いと悪いの間を行き来するな。
喋り方はくだけているけど、貴族っぽい雰囲気も受ける。
「……」
とりあえず、私は本をめくった。
「あー、すまんな。本が読みたいよな。俺はそろそろ行くわ。じゃ、な」
「はい。本運んでくれてありがとうございました」
リンネさんは、去っていった。
私はほっとした。
それから私は土日に、しばらくブルボンス図書館に通った。
そしてその度にリンネさんと出会った。
最初は警戒していたんだけれど、会う度に彼に慣れていった。
寂しかったのもあったし、自分は大人と話すほうが楽…だと思っている私は、くだけた感じで人懐っこい感じのリンネさんと段々話すようになった。
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