Ep023 ネット恋愛編 ナルシストさん登場

彼とは蟠りは解けないでいた。LINEは頻繁にしていても電話の時間は極端に減った。話しても楽しくないし直ぐに喧嘩になってしまうから。


そんな時、歳の近い男性とSNSで知り合う。そもそも、この方へは私から近寄った。女性の理想論で「俺に知性について来れるような女性」とイケすかない投稿をしていて、ほほうーそんなことを宣うのなら相当な知性をお持ちなんでしょうね、と女性に対して高慢ちきな鼻をへし折ってやりたいと思ってコンタクトを取るようになった。彼の投稿は偉そうな自撮りや俺様なものばかりで私の中でナルシストさんと呼ぶようになった。


ナルシストさんへの興味は長続きせずSNS上の友達になってから暫く放置していた。ナルシストさんが影響を受けた漫画をSNS投稿をした。それは私の子供の頃から好きな漫画ばかりで感動の勢いのままコメントした。


ナルシストさんはそのコメントが嬉しかったらしく、また私も意を得た返答が嬉しくコメント上で十数通やり取りをしたところでDMが届いた。LINEのIDだった。手慣れてると感じ警戒した。


SNSでLINE交換したことないので(嘘だけど)ちょっと怖いですと送ったら安心してとfacebookのアカウントも教えてくれて本人確認をした。またSNSで連絡先交換をしたのはmixi以来だと聞き、真実味を感じLINE交換をした。


ナルシストさんの投稿を見ると女性遍歴が多く、バンドをされていて、かなりモテてきたご様子の方。また社会的地位や収入も高く高級車を乗っていた。同年代の中では高身長で体を鍛え身なりにも気遣っている。きっと無闇に女性に理想を求め、この人は違ったと別れと出会いを繰り返してきたのだろう。


ナルシストさんは知的好奇心に溢れ自分の理解者を求めいていた。投稿した漫画に関しても女性で共感したのは私が初めてだったようだ。漫画の感想から自分の根本を理解してもらったと思ったようだった。今まで誰も僕を理解してくれようとしなかったと嘆いた。


私は女性にしては男性よりの趣味趣向をしているが特段特別な女な訳ではない。余程つまらない女にしか出会ってないのだろうと思った。きっとバンドファンの中から女性を選んでいたのだろう。


イケすかない奴からスタートしたナルシストさんだったが投稿とは裏腹に紳士的で純粋な人だった。私たちは意気投合して数日毎に1~2時間お喋りするようになった。


読書、漫画、音楽、歴史、パンデミック、政治と互いの好奇心の赴くまま話した。最初の頃は外側の話だったが互いに自分の内面の話になっていった。ナルシストさんは自分が他人と違う苦しみ、息子さんも同じようで虐めがあったことなどを話してくれた。


病気をしてから価値観が全く変わり、以前は女性に対して享楽的だったが今は真の理解者を求めていて、それが私だと言うのだ。会ったこともない私に。


また私の自分の中の内なる炎についても共感し、私たちは同志だと言ってくれた。自分自身の炎に焼け焦げ、消えてしまいそうな私の炎を掬い上げてくれ感動して泣いてしまった。


ナルシストさんは私のことを魂の片割れと呼ぶようになっていた。

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