Ep018 ネット恋愛編 怒りと悲しみで
私は心のバランスを崩していた。自分が何をしたいのか、どうしていいのか分からない。彼のことはとても好きだが苛立ちを感じる。私を特別扱いしないのだから関係を断ち切りたいのに彼の声が中毒のように聴きたい。
いつでも彼のことを考えていた。胸は抜けない棘が刺さったように常に痛苦しい。以前のように軽やかに彼とお喋り出来ない。私はどうやって話していたの?今は軽やかそうに話すことが精一杯で不自然な私。
LINEメッセージは元通りになり数十通と送り合っているが食べ物やカルチャーなど当たり障りのない内容。お調子者の様に返信しているが感情が少しも乗らないように慎重に言葉を選んでいた。電話の時間は短くなり寝落ち電話もしていない。眠れない日が続く。
私の気持ちを察してか私が小説家を目指す彼の書く綺麗で深みのある文が好きなので短編小説や書き出し小説をこまめに送って来た。
また少しずつ電話の時間が増えていき久しぶりの寝落ち電話をする。欲して欲して仕方なかった彼の声に心が震え、なかなか眠れなかった。また今夜も寝落ち電話することになった。夜が楽しみだった。
しかし駅までのお迎えを頼まれた娘の帰りが遅く、約束した23時になっても電話出来ないでいた。「待たせるの悪いし今夜はやめておく?」と連絡する。「どちらでもいいよ」と返信が来る。
「どちらでもいいなんて言われたら・・・」「話したい?」「私の答えはいつでも一つだよ」「笑笑」と気持ちが通じていると嬉しかった。
娘から連絡があり「電話出来るの0時半になってしまうけれど大丈夫?」と確認し「大丈夫だよ」と返事があった。娘と駅まで迎えに行き、やっと彼と電話出来る。今までは、なし崩し的に寝落ち電話となっていたが今夜は初めて約束しての寝落ち電話だった。
私はいそいそと彼に電話する。私はその時、少しはしゃいでいたと思う。20分ほど話した時に彼が言い難くそうに、しかしにやけているの隠しもせず「ええとですね、ひーちゃんからLINEが来まして・・・そちらと電話しようかと」と言った。ひーちゃんとはネットで出会ったアラサー女性だった。
私はサッと血の気が引いた後に燃えるような怒りが湧いてきた。「分かった。勝手にすれば。」と電話を切った。LINEを送る。
私 もう私はいいから
彼 ……おやすみ
私 勝手にやってればと思う。これで終わり。さよなら
彼 ……何も返せないや。もうなんか、それ言われたら
私 返してこなくていいから
彼 分かった
私 取り敢えずSNSはブロックしたから
彼 じゃあもう関わりもなくなるか
私 あなたのことは好きだけど
彼 友達に戻れたら良いのにな
私 それは無理。何、寝言言ってるの?私を蔑ろにする人に縋るほどには自分を落とせない
彼 ノラがLINEしてくれるの待ってる。それまでは俺からはLINEしない。
私 しないから。目が覚めた。では、そういうことで勝手に楽しんで。私は私で楽しむから。
私は怒りと悲しみで一睡も出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます