第11話 考察
「西条先生、公園の工事はスムーズだったと今、伺いましたが、
どういうことでしょうか、と言いますのも、あそこは少し立ち入った者でさえエライ目に遭っている場所です、
いわば飢えた狼・・・いや情け容赦なく誰にでも噛み付いてくる
狂犬のような物件です、
よく作業員など、なんともありませんでしたねぇ・・・」
「さぁ私は自分に何も
工事がスムーズに進んだことには、そんなに疑問は持ちませんでしたなぁ・・・」
「そうですか」
そこで尾形君が自分の意見を言いました。
「それは土地の魂たちも何か供養などしてもらえると期待して作業をおとなしく見てたんじゃないですか」
「なるほど・・・そういう考えも成り立ちますか、それならば整地作業と公園がスムーズに完成したのも解る気がしてきますなぁ・・・なるほど」
「それに問題が発生したのは工事が終わってからですよね、公園だけ作って終わったというのが返って怒れる魂に火をつけたんじゃないでしょうか」
「尾形君・・・冴えてると言いたいところだが怖いこと思いついたもんだな」
「え?」
「俺たちは、これからあそこで解体工事、それと作業を実際に指揮したり自分たちも、やる事になるんだ先が思いやられるじゃないか」
「えーまぁ・・・でも本格的にあそこ一帯を浄化するんだって、あらかじめ魂たちにわかってもらいさえすれば意外に工事はスムーズに行くかもしれませんよ」
「それは、そうだが話が通じる相手じゃ、もう無くなってるっぽくネェ?尾形君」
「あー・・・そうかも・・・」
目が点になっている私たちを見て先生が質問してきました。
「ところで貴方がた、あの土地には、どのくらい携わっておるのですか、私の友人だった民谷くんは半年も立たずに、あの世に逝ってしまいましたが・・・」
「はぁ
「よく、ご無事ですな、あそこには細かいのもあり祟りの宝庫ですよ、何か特別な、お祓いでもされてらっしゃるのですか」
「西条先生、我々全然無事じゃないですよ母も死にましたし家も火事で燃えました
私はノイローゼになって自殺も図りました、ま生きてますが・・・
尾形君も友人がホームレスになったり本人も救急車で運ばれています、
この顔つい先日の事件です、そうそう私、警察にも逮捕されましたよ」
「ええ、そうなんです」薄いパンダ顔で尾形君はニッコリしました。
今度は西条先生の目が点になりました。
「尾駮さん、その貴方のジャンパー、それは右翼団体か何かの象徴ですか」
「あ、これですか、これは今、お世話になっている祭師さんに頂いたのです」
「さいしさん?祭司といいますとキリスト教の方ですか、あれは司祭か・・・・」
「いえ、こういう字を書きます」メモに書きました。
「ふうん・・・あまり聞いたことのない祭師とは祈祷師さんか何かですか」
「それが正式な説明はまだ伺っていないのですが、ま、お祓いをしたりされる方です」
「ほぉー、さいし・・・祭師・・・あっ確か神道学の文献で一度見かけた事がありますよ、
あれはですな確か
「はい」私はジャンパーを脱いで西条先生に渡しました。
内側を見た西条先生は声が少し大きくなりました。
「おぉこれは肩に梵字・・背中に鳥居と真言ですな、
ん?この下の方のこれは・・・あっヘブライ語じゃないですか、
今時、読める人は学者しかいませんよ・・と、
この菊の御紋、式さんココ見てください四ヶ所、赤い糸が縫い付けてあります、
これは青龍・朱雀・白虎・玄武を意味していましてな、
この御紋は太陽をも表現しておりまして世界中に通用する記号になっていますが、
随分、昔に失われたやり方、未だにこの方法を用いる御方がいらっしゃるのは驚きました」
「は、さすがに先生、博識でらっしゃいます、私は意味も知らずに、ただ着用しておりました、なにか、ありがたい物なのですね」
「いやこの祭師様、只者では、ありませんな、聞いたこともなく資料にも登場しないとなれば天子様直属の機関にいらっしゃる方かもしれません・・・これは・・・・
スゴイものを見ました・・・式さん、あなた光栄なだけじゃなく人生がきっと大きく変わりますよ・・・」
私と尾形君はなんと言っていいのか分からずにジャンパーを見つめて黙ってしまいました。
「うーん、これは奥が深いですよ何十年か私も色々研究した結果ですが、
この日本の生い立ちや古事記、神話は、旧約聖書や黙示録との共通点が多くありましてな、
それと日本人が普段使用している言葉の語源も人間の起源にまで遡る大きなロマンある話が最近、新しい発見で、いろいろ現実味を帯びて来ていますが、
そんなのは元々古事記や聖書、死海文書などにも書かれていることで解釈次第で驚くことでもなんでもなく・・・」
「あ、あの先生、私ら無学でして予備知識もたいしてありません、もう少しゆっくり、わかりやすく教えていただけますでしょうか」
「あぁ、ははは、どうも独りで物事、考えることが最近、多くて・・・
せっかちでしたな、ごもっとも、
いや、その菊の御紋はですな花びらの数からデザインから意味がありましてな、その昔の安倍晴明などは、誰に教わったのか正しい知識があるところなど神・・・か宇宙人にでも教わらないと五芒星を象徴にした、あんな陰陽道を自力で思いつくことは、
まずないでしょうな天啓があったはずです、かのモーセのように」
「はぁ・・・」
「つまり今、式さんが着用されます、そのジャンパーには、そのような神道学でも決して表に出ない、いえ、出せないような神道法が施されておるのではないかと思いますよ、あくまで、まだ推測ですが」
「はい」
『ま、ただの祭師じゃないし護符もジャンパーも深い意味があるとは思ってましたが西条先生も相当な方だなと心の中で思いました』
「ときに、お二人、こういう時、頭の中でどんな曲が流れますかな?」
「は?」
「だから二人の全じぇん大丈夫じゃないですよぉーの後じゃよ・・・」
「え?」「はぁ?」
「今は、頭の中で何の曲が流れてますか」
「あーそういう・・・えー私は・・・何ですかね犬神家の一族とか・・」
「僕はドビュッシー・・・」
「あんたら一体何をおしゃっておるのか、さっぱりわからんですなぁ、こういう時は悪魔祓い映画エクソシストのテーマ曲でしょうが
トントットトン、トントットトン・・・・」
「あっ!あーーはい、あれわぁチャンチャンチャチャンじゃないですか?なぁ尾形君」
「えっと俺なんのことかさっぱり・・・すいません」
「いやいやチャンチャンじゃピアノの音は表現できんじゃろう・・・」
「あのな映画エクソシスト・テーマ曲で検索」
さすが尾形君、キーパンチが速い。
「はい・・・これ・・ですかね」
―♫~♪―
「おーこれこれ怖い祟話の後に、この音楽じゃよ、しかし、すごいですな、すぐに出てくるんですなぁスマホンは・・・」
「はい」「ハイ」
「あの式先生そろそろ会社に戻りますか?」と尾形君。
「あーっ、そうだな、すっかり長居してしまいまして、また伺いたい事が出ましたら連絡させていただいてよろしいでしょうか」
「あーかまいませんよ、いつも暇ですから経過も気になりますし連絡お待ちしていますよ」
「あ、はい、こちらこそよろしく、お願いいたします、それでは・・・」
「おじゃまいたしましたー」
「オジャマいたしました」
妙に体と心に力が入って疲れてきた私たちは
奥様に御挨拶して西条邸を後にしました。
「おい」
「はい」
「先生、大丈夫かな長時間、無理させちゃったんだな」
「はい、壊れて・・・きてましたね・・・」
「俺らも帰って休もう・・・だめだ」
「はい・・・」
数日かけて、この取材の数々をレポートとして社長を通して静華さんに送りました。
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