第6話 後悔

 尾形さんは不動産屋に行ったあと一緒だった二人を送り、父母の待つ家に帰りました。

スマホや鍵などはAさんの、お母さんが持って帰りました。


「ただいまぁ」

「あれ、お帰り、ご飯食べる?」

「あっ食べたい、なんでもいいよ」

「昨日のカレーもあるよ、あんた食べてないでしょ」

「あ食いますハイッ」と手を挙げておどけました。

「なんか変ねぇ・・・」

「なにが」

「うーん・・・何か・・・」

「あのさ母さん神社の御守りとか御札おふだっていくらすんの」

「なに、なにすんの」

「それがさぁ・・・」

尾形さんは自分のお母さんにAさんが行方不明になった話をしました。


「ちょっと、あんた一回外出て」

「なに?」

「塩撒くから、おいで」

二人は玄関先で、お互い塩を頭や背中にふったそうです。


尾形さんの、お母さんという方は感の強い方で昔から目に見えないものに敏感な人なのだそうです。


それは先祖代々からの遺伝もあるそうで、だとすれば息子の誠一さんも少なからず感が強いのでしょうか・・・


「この塩はね、お父さんの会社で時々つかってる神社の塩だから、それにそのアパート○○町の川沿いじゃない?

あそこはね、あぶないからもう行っちゃダメ」


「え?かあさん知ってんの」


「噂聞いたことあるだけよ」


「あしたさぁAの母さんと部屋のゴミ片付け手伝う約束してんだよ」


「・・・じゃ先に神社行って、お守りと御札頂いてから行きなさい絶対よAくんの、お母さんの分も持って、それから行くの塩もあげるから」


「おー・・・わかった、とにかくそうするわヤバイんだなやっぱ」


「あんたなんてもんじゃないわよ」


「なに、教えてよ」


「だめ、変な先入観持って行くと良くないし、さっさと済ませちゃいなさい」


おかあさんは晩ご飯の支度の手をとめて家の神棚にお灯明を点けて祈りました。


「神社の奥さんは私お友達だから今から電話してお守りと御札、頼んでおくからアパート行く前に必ず神社に寄ってから行ってね」


尾形さんはAさんが行方不明になる前、相談に乗るとか軽く大丈夫だと言って何も対処していなかったことを本当に後悔したそうです。


 翌朝、尾形さんはAさんのお母さんに電話をして現地集合の連絡と共に注意事項を伝えました。


それは『一人で部屋に入らないことです』


 朝一に神社に行って御守りを用意するのでという事と相当あのアパートは強烈だということをAさんのお母さんに伝えました。


 Bさんを迎えに行き、その足で神社に向かい御守りの、お礼を丁寧に述べて二人はアパートに向かいました。


アパートの前にはAさんのお母さんの車が既に待機しておりました。

応急的に安い紐でしたが、お守りをつないで三人は首から下げ部屋に入りました。


目に見えないものに対して写真や映像を見ている三人は何の疑問も持たずに用意された御守りと御札を、ありがたく感じていました。


 ゴミは大量でしたが見た目ほど多くはなくペットボトルや空き缶、弁当のからなどが、ほとんどで燃えるゴミも少なく、みるみる部屋が片付いていきました。


 畳の部屋がもうすぐ終わると思った頃、尾形さんとBさんは台所付近で雑巾がけをしていたAさんのお母さんが、しゃがみ込み具合悪そうにしているのに気がつきました。


お母さんは自力で立てましたが、めまいがするらしく二人で外の車まで付き添って避難しました。


「大丈夫ですか・・これ水です、あと何も食べてないなら、これ食べてください」


尾形さんとBさんがコンビニで買った、おにぎりやパンがありました。

尾形さんは神社の塩を自分の車に取りに行き、ひとつまみ、お母さんに舐めてもらいました。


「これちょっと舐めてください肩にも塩振り撒きますね、あと僕らでやりますから無理しないで車で休んでいてください」


「すいません」とAさんのお母さんは、か細い声であやまりました。


泣いているかのようなAさんの、お母さんが急にかわいそうになってきました。


やっぱりAさんを心配しているのです・・・

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