第5話 完全事故物件

尾形さんが言いました。

「とにかく、すぐ不動産屋に行って聞いてみよう解約だ解約・・・」


尾形さんは台所の窓を閉め部屋から出るように二人にうながし車に乗り込みました。


「お母さんハッタリ利かすの俺、得意なんで不動産屋にやっていいですか?」


尾形さんは父親の会社の交渉事や『社会勉強だ』と関係のあった裁判の傍聴などに普段から連れて行かれており普通の若者よりは知恵が付いていたのだそうです。


「おい尾形あれ、あの動画さ、あのあとAのやつ居なくなったんじゃないか?」とBさんが言い出しました。

「そうかもな・・・お母さん解約でいいんですよね、あの部屋」

尾形さんが言い不動産屋にAさんの、お母さんと三人で行きました。


 不動産屋に到着すると担当者が出てきましたが

「ちょっと深刻な話なんで上の者、呼んできます」最初の社員は引っ込んで店長さんが出てきました。


「ハイどういった、お話でしょうか」


「これ賃貸契約書です、まず解約お願いします、それと支払ったお金、全額返してください」

尾形さんと、お母さんで事情を長々説明した。


「そうは、おっしゃいますが入居前に説明致してますので返金対応はできません」


尾形さんが大きな声を出して言ったそうです。

「おいっ!一体何を説明したんだ?お化けが出て金縛りにもなりますし部屋の物が飛びまわって窓ガラスに大量の手形が付きますって言ったのかっ!」


「・・・・・」


「Aはな今、行方不明で捜索願が出てるんだ、それを踏まえて、この写真と動画を見ろよ、この足で警察に相談しに行くぞ弁護士つれて」


そう言ってスマホを取り出し店長に見せた。


「うちの息子に何かあったら責任問題、追求しますから」お母さんが言いました。


店長さんは写真と動画を見て顔面蒼白だった。

「わかりました全額、返金対応致します、その代わり、この写真と動画消してもらえますか」


「なんで?ダメだよそんなの、いざとなったらTVでも裁判でもコレ証拠になるしね」


「いえいえ、うちで出来ることは返金対応までです、それに、そういうもの持っているのは良くないと思ったものですから・・・」


「あのさ店長さん、あそこで一体何があったの?」


「それわぁ・・・守秘義務というやつで、お答えできないです」


「それじゃあさ今すぐ、お金返してよ」


「それも、すぐにはできないです、まず部屋を確認して明け渡してもらってからになります」


「そっか、それじゃ、この契約書はコッチの控えなんで持って帰りますから、これからすぐに部屋かたずけて、また来ますから、いいですね」


お母さんと二人は一応納得して帰路に着きました。

「明け渡しってさ、あの部屋のゴミなんとかしないとダメなんだろ、どうする」


「あのー私あした行って片付けます、それで、もしよかったら御礼、バイト代支払いますので手伝っていただけないでしょうか・・・一人じゃ怖いですし・・・」


「そうですよね・・・」


「二人共ごめんなさい本当に、ありがとう」


「しかし、あの店長、何隠してんだろうな」

尾形さんとBさんは、片付けの手伝いを了承するしかなかったと言います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る