第3話 Aさんの部屋

 尾形さんはBさんに電話しました。


「おいB、Aの奴、電話に出ないぞ、なんか変だから付き合え」


「あー?どうしたのかな、じゃ迎えに来てくれるか」


「おー、もう向かってる、すぐ着くから」


「スマホ忘れて一人でパチンコ行ってんじゃないのか?」


「だと良いけど」


尾形さんはBさんを誘い連絡のつかなくなったAさんの部屋に行ったのです。


午前10時頃、二人で部屋に行きノックしてみたが応答がない。

ドアは施錠されておらず恐る恐る部屋に入りました。


 部屋は真っ暗で臭いがきつく照明をつけてみると中はゴミが散乱しており、ひどい有様でした。

なんだか、わざと散らかしたんじゃないかって位めちゃくちゃな感じがします。


「うぇ、なんだこれ・・・」


「うわ、なんかヤバイな」


部屋の窓にはダンボールが画鋲で貼られ暗室のように暗い状態で玄関側の台所も同じでした。


尾形さんが言いました。

「窓・・・全部、ふさいでるなぁ」


奥の部屋は、となりの101号室側の壁に、なぜか押し入れの引き戸が2枚立てかけられており、その下にはコンビニ袋に入ったゴミが山積みになっていました。


「いやぁあ、こんななら、もっと頻繁に来てやれば良かったなぁ」


「あー、ここまで、だらしねぇ奴じゃ無かったけどな」

部屋の奥に入りAさんを探しましたが居ません。風呂場にも居ません。


「おいB、コレ・・・」

台所のシンク横のスペースにスマホと部屋のカギが置かれたままです。


よく見ると印鑑や健康保険証・賃貸契約書なども置いてありました。


「スマホ置きっぱなしで、どこいったんだ・・・アイツ」


 その後、毎日連絡したり部屋に行きましたがAさんは居ません。


尾形さんとBさんでAさんの、お母さんのいる家に行きました。

「ごめんください、Aさん居ますか?」


Aさんの、お母さんは何も知らないようでした。


「ん?知らない、居ないですけど、どうしました?」

聞くと別居前に親子ゲンカしてAさんは出て行ったきりだといいます。


「お母さん、あいつ、いつも俺は邪魔者だからなんて言ってましたよ、

何をしようと自由ですけど、あいつは、あいつなりに気を遣ってたんですよ、

俺たちは高校のときの同級生です、あいつ今、行方不明になってて

今日、警察に捜索願出したくて行ったら親族しか受付できないらしいんですよ、これから警察行って捜索願、出してもらえませんか?」


しばし沈黙がありました。


「お母さん、Aがアパート借りてたの知ってますよね」


「いえ知りません・・・」


「えー、だってお母さん部屋の保証人じゃないですか?」

尾形さんは少しカチンと来ました。


「えっ?知りません部屋はどこなんですか」


Bさんが言う。

「あー、たぶん勝手に保証人にしたんだよアイツ」


お母さんが聞きました。

「あのー正確には、いつくらいから居なくなったんでしょうか」


「一週間前です」


Aさんのお母さんは

「わかりました」と言って尾形さんBさんと一緒に警察に行き捜索願を出しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る