第1224話 クリスマスイブ

 ※本来なら11話をお届けする予定でしたが、日にち的にクリスマスの話を書きたくなったので2年生の頃の翔太とひよりの模様をお送りします。後、今回は翔太が嫌われたいくだり云々(ネタ不足の原因)はないです。ただ2人がのんびりとしてるだけの話なので、それでもいい方のみお進みください。



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「翔太。翔太は今日がなんの日か知ってる?」

「なんの日ってそりゃあ...クリスマスイブだろ?」


 12月24日の昼、いつものように俺の部屋でくつろいでいるひよりが突然そんなことを訪ねてきたので俺はそう返す。


「そう、今日はクリスマスイブ。クリスマスイブです」

「なんで2回?」


 クリスマスイブだからなのかいつもよりややテンションが高いひよりが、指をビシッとこちらへと向けながらそんなことを言う。


「クリスマスイブと言えば、カップルがイルミーネーションを見に行ったり、カップルがプレゼントを贈りあったり、はたまたカップルが夜景を楽しんだりしてる。要するに特別な日です」

「なんでカップル限定なのかはさて置き、世間的に特別な日なことは確かだな」


 指を指したままやや上目遣いで何故か少し不満げな様子のひよりはそう続ける。俺は戸惑いつつもそれに頷くことにする。


「なのに、今の私と翔太には特別感がない。これは大問題」

「まぁ、いつものように集まってゲームしたり雑談したりしてるだけだからな。でも、大問題ってほどじゃ...」

「いや、大問題。翔太には反省して欲しい」

「いや、ひよりも今の今まで普通にいつものようにダラダラしてだけだよな!? 反省するにしても俺だけなのおかしいよな!?」

「最早、有罪の域」

「捕まんの!? 俺、今年1人で獄中クリスマス迎えることになるの?」

「大丈夫、ちゃんと私もついていく」

「いや、ついてこないで。それよりも俺を牢屋から出してくれ」

「ふぅ...まぁ、そんなわけで」

「どんなわけだよ」


 少し喋りすぎたのか息をつくひよりに軽くツッコミを入れつつ、続く言葉を待つ。


「今日私は翔太の家に泊まっていく」

「ダメです」

「ドンドンぱひゅぱひゅー」

「いや、ドンドンぱひゅぱひゅーじゃなくてダメだ」

「なんでそこまで...」


 少し悲しげな顔を浮かべるひより。


「じゃあ、一応聞くが泊まるとしてお前はどこに寝るつもりなんだ?」

「? 翔太のベッドだけど?」

「はい、お帰りくださいやがれ」

「ちょっ」


 さも当たり前かのようにそんな返しをしてきたひよりに俺はため息をつきながらそう告げる。うん、なんとなく読めてたわ。


「というか、その場合俺はどこで寝ればいいんだよ」

「普通に翔太も翔太のベッドで寝ればいい」

「いやだよ。毎年クリスマスはお袋が夜中にプレゼント置きにくるんだぞ? もし見られでもしたら俺はどうすればいいんだよ」

「...笑えばいいんじゃないかな?」

「それで済ませられるかっ。というか、付き合ってもない年頃の男女が一緒に寝るのはダメだ」

「むぅ」


 まだなんとか反抗しようとするひよりに俺がそう言いきると、ひよりは不満げに頰を膨らませる。ひよりは幼馴染だからと俺を信用してくれているが、実際俺は俺がそういうことをしないかなんて言いきれないからな。少しは危機感を持って欲しいものである。


「ダメなもんはダメだ」

「...分かった」


 俺が折れないと悟ったらしくひよりがようやく首を縦に振ってくれた。よ、良かった。


「でも、そうなるもクリスマスイブの特別感が足りない」

「ふむ、それじゃあどうする?」

「まず部屋からしてクリスマスイブ感が足らない」

「なるほど?」

「なので、今からなにか買い出しに行って飾り付けとかどう?」

「まぁ、それならいいか」


 そんなわけでクリスマスイブの昼、俺たちは近くの大型ショッピングモールへと足を運ぶのだった。



 *



「ふー、食べた食べた」

「...おいしかった」


 部屋の飾り付けを終え、夜のクリスマスイブ特有のちょっと豪華な食事〜七面鳥を添えて〜も食べ終えた俺とひよりは部屋で2人ダラけていた。それはもうダラけていた。なんならひよりに至っては少し眠そうである。


「というか、ひよりは今年は自分家で家族とクリスマスイブを祝わなくて良かったのか?」

「...今年はお母さんもお父さんも忙しいらしくて本当のボッチクリスマスを迎える予定だったから大丈夫」

「な、なるほどな」


 ひよりは少し顔を暗くしてそんなことを言うう。...どうしよう。もう、そろそろ帰れよって言おうと思ってたのにちょっと言い出しにくくなってしまった。


「でも、翔太が一緒にいてくれたおかげで今年も楽しくクリスマスイブが送れた。...ありがとう!」

「...」


 そんなこんなで俺が悩んでいると暗い顔から一転、俺の手を握るとくもりのない満面の笑顔でそんなことを伝えてくるひより。そのあまりの幸せ満開といった笑顔に俺は固まってしまう。

 思えば今年のクリスマスイブは買い出しに行ったり飾り付けをしたりなんだりでいつものクリスマスイブよりもクリスマスイブ感が強くて、楽しかった。でも、それもこれもひよりのおかげなんだよな。

 俺はそんな考えに浸りながら帰っからいつ渡すべきかと迷っていたある物を、ついにポケットから取り出した。


「俺の方こそありがとな。それでなんだけどさ、ひよりが気にいるかは分からないけど日頃の感謝をこめてってことでこれを...って大丈夫か!?」

「......むにゃむにゃ」

「えっ、寝た?」


 が、突然ひよりがその場に倒れてしまい慌てて駆け寄るとひよりは目を閉じてなにか寝言を言っている。ま、マジか。


「というか、この場合どうしたらいいんだ? 起こす...のは可哀想だしひよりの家に届けるって言っても両親帰るの遅いって言ってたしな」


 あまりの突然のことに俺はどうしていいのか分からなず大いに困る。


「というか、渡せなかったし。まぁ、でもよくよく思えば気持ち悪い気もしなくもないしやめといて正解か」


 そして俺はさらに手に持ったある一つのものを見てため息をつく。というのも、今回俺が用意したのは雪の結晶の形をした髪飾りである。さっきショッピングモールへ行って2人で分担して飾りを探していた時にたまたま見つけて、ひよりに似合いそうだと思いこっそり購入したものだ。


「むにゃあ」

「うーん、まぁ起きるまではとりあえずこうして...っと、ちょっと待つか」


 俺は起こさないようゆっくりとひよりをベッドの上へと動かした。...にしても、可愛い寝顔だは。まぁ、あまりに起きなかったらちゃんと起こして帰らせるとしよう。クリスマスイブなんだ。今日くらい特別優しくしてやるくらいいいだろう。


「というか、寝顔見てたら俺まで眠くなってき——」


 そんなことをぼんやりと考えていた俺はそこで意識が途切れるのだった。



 *


「...上手くいきすぎてしまった」


 翔太が床に倒れるように眠ってしまったので、ベッドの上で寝たふりをしていた私は体を起こす。翔太のことだから眠ったフリをすれば気を遣って起こさないようにして、帰ってと言えなくなるのではと思っていたが、まさか翔太が眠ってしまうとは。...本当にここまで上手くいくと思っていなかったので嬉しい反面、動揺を隠せない。

 わ、私はこれからどうすればいいのだろうか? というか、なんとか泊まろうと意識しすぎたせいかなにをしたらいいのか分からない。助けて、ドラえも◯。


「んっ?」


 そんなこんなでアタフタしていた私の目に1つのものが目についた。翔太が手にしているものである。


「...これは髪飾り?」


 私はそれを手にとり眺めてそう呟いた。そう言えば私が寝たふりをする直前に翔太がなにか渡そうとしてくれてたけど、もしかしてこれなのだろうか? というか、なんかやっぱり気持ち悪いかもだから渡さない的なことを言ってたような...?


「めちゃくちゃ可愛いし、翔太がくれたものならなんでも嬉しいのに...全く、馬鹿な翔太」


 私は髪飾りをゆっくりと髪へとつける。


「う、うーん」

「メリークリスマス翔太。プレゼントは返さないからね? ...大好きだよ?」


 そして目を瞑り眠る翔太に毛布を被せベッドの上へと乗せると私は翔太の耳元で面と向かっては口に出来ないそんなことを囁くのだった。

 ちなみに、恥ずかしすぎてその後部屋の中をいったりきたりしていたのは秘密である。



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 みなさん、12月24日と言えばアポロ8号が月周回飛行に成功した日ということで有名な日ですよね(圧)

 ということで、クリスマスソングなんて歌わずにポルノグラフィ◯ィの「アポロ」を熱唱しましょうね。いいですか、12月24日はクリスマスイブなんかじゃなくてアポロ8号が——。


 まぁ、良かったら星やハートでもください。では、みなさんよいメリークリシミマスを!

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