第25話 代行者〜山羊座〜
「殺し合いとか面倒くさいなぁ。全く誰を代行者にしようか」
王の気まぐれに付き合わされるのは嫌で仕方ないが、これからは命令なので従うしかない。
これから起こることが予想でき深いため息を吐く。
「ノーセン」
自分に仕える下級神を呼び出す。
「お呼びでしょうか、アイゴヌルス様」
「うん。今なんか急ぎの案件ってあった?」
「いえ、ございません」
「そうか。なら、急ぎでやって欲しいことがある」
ノーセンの返事を聞いた瞬間心の中でガッツポーズをし、そのまま内容を説得する。
「俺に似た人間を捜して欲しい。但し、山羊座に生まれた人間から見つけてきて欲しい」
「人間をですか?」
アイゴヌルスが何を考えているのかわからず困惑するノーセン。
「ああ」
そう返事をしたら説明は終わりといった感じで寝室へと向かうアイゴヌルス。
「かしこまりました」
ノーセンは部屋をでてすぐにアイゴヌルスの命令を実行する。
「あー、疲れた。見つかるまであ少し寝よう」
ベットにダイブしてそのまま眠りにつく。
六日後。
「アイゴヌルス様。ノーセンです。入りますよ」
一応声をかけて中に入るが、大抵アイゴヌルスは寝ているので返事はほぼ確実に返ってこない。
アイゴヌルスに仕えることになったノーセンは挨拶をしようと部屋をおとずれるが返事が返ってこないため許可が出るまで部屋の前で十七日ほど待っていた。
その時たまたま通りかかったジュゴラビスが事情を察しアイゴヌルスを叩き起こしてくれなければまだ部屋の前で待っていただろう。
その後、アイゴヌルスからは勝手に部屋に入っていいと許可をいただいた。
「アイゴヌルス様。起きてください」
やっぱりと思うノーセン。ベットの上で気持ち良さそうに寝ている。
アイゴヌルスには仕事をさせるより、叩き起こす方が大変で呼びかけて一時間経った頃漸く目を覚ました。
「ノーセンか。どうかした」
ベットの上で横なったまま問いかける。
「人間を見つけてきましたのでその報告に参りました」
「もう見つけてきたのか。相変わらず早いな」
ノーセンに起こされてから自分が六日間ずっと寝ていたいたことを把握する。
ベットから降りて体を伸ばしてからソファに座る。
「どうぞ」
紅茶とクッキーを机におく。
「ああ、ありがとう」
紅茶を一口飲んで「(やっぱりノーセンの淹れる紅茶は最高だな)」と思う。目覚めの一杯はこれにかぎる。
「じゃあ、報告を」
クッキーを口に運ぶ。
「はい。似た人間を二十五人ほど見つけました」
「(えっ、そんなにいるの?代行者は一人だけなんだけど)」
アイゴヌルスは二十五人も候補者がいることに驚く。
でも、これはアイゴヌルスの指示が悪かった。山羊座の中から似た人間を捜して欲しい。
何に似た人間をか、何人見つけろとかを言わなかったのでノーセンはとりあえず似ていると感じた人間を全員報告した。
「こちらに二十五人の情報をまとめてあります」
そう言うと水晶を渡す。
アイゴヌルスは水晶に手を置き神力を注いで情報を読み取る。
「なるほどね」
全員自分に似ている所が違うので誰を選ぶべきか悩む。
「ノーセンはこの中で誰が一番俺に似ていると思う?」
自分と他神の考えは違うので念のため確認する。
「私はこの二人かと。思考はこの人間が一番アイゴヌルス様に似ているかと思います。もう一人は、上手くいえませんがどこかアイゴヌルス様に似ていると思いました」
いわゆる勘というやつだ。アイゴヌルスとは思考も価値観も何もかも正反対なのに、何かそう感じる所があった。
「ノーセンもこの人間気になった?俺もなんだよね。うーん、どうするべきか」
後は自分で決めるから下がっていいと命じノーセンは部屋から出ていく。
「うーん。ノーセンも俺と同じ人間に目をつけていたし、この人間に頼もうか」
一人の人間を見つめそう呟くと指を鳴らして人間界へと降り立つ。
アイゴヌルスは自分の代行者を誰にするか決めた後すぐ人間界に降りたったが、その人間は大勢の人間に囲まれながら何かを指示していた。
人間は仕事中だった。
これでは人間に話しかけても今は無理だと言われ話しを聞いてもらえないと考え、人間が一人になるまで寝ることにした。
「女が一人になったら教えろ」
手の平に収まるくらいの小さいヤギを作り出しそう命じた後、雲の上で寝はじめた。
それまで、アイゴヌルスは人間が家に帰るまで太陽の光の温かさを感じながら気持ち良さそうに寝た。
「アイゴヌルス様。女が一人になりました」
空が暗くなり星が浮かび上がった頃にアイゴヌルスに報告する。
「結構早かったな。で、どこにいる?」
ヤギに案内しろと命じる。
「こちらです」
女の家まで案内する。
「ここです」
一つの家の前で立ち止まる。
アイゴヌルスに女の場所を教えたらヤギは光に包まれて消えた。
「ここに?」
こんな小さい所に本当にいるのかと不思議に思うも、家の中に入っていく。
「本当にいた」
下着姿で水を飲んでいた女を見つける。
ゆっくり女に近づき女が振り向き目が合う。
「人間よ。俺の頼みを聞いてくれ」
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