第7話 代行者〜牡羊座〜

「アスター、代行者が決まった」


クリオフがそう言うと光に包まれた知らない男がいきなり現れた。


「お呼びでしょうか、クリオフ様」


クリオフに頭を下げるアスター。


「アスター、ルーカスが俺の代行者として参加する」


ルーカスをアスターに簡単に紹介する。


「初めましてルーカス様。私はルーカスと申します。以後お見知りおきを」


アスターはルーカスに頭を下げ自己紹介する。本来アスターはルーカスに頭を下げる必要などないがクリオフの代行者となったため礼を尽くすことにした。


「ルーカスです。こちらこそよろしくお願いします」


同じようにいに頭を下げ挨拶する。


「では、これよりクリオフ様の代行者という証を体につけてもらいます」


「証を体に?」


ルーカスが言ってる意味がわからないという顔をする。


「はい。証はどの神の代行者かを示すものでもあり、代行者以外の人間を間違って殺さないため見分けるものでもあります。そのため、代行者は必ず体の何処かにその証をつける必要があります」


アスターの説明にそういうことかと納得するクリオフとルーカス。クリオフの説明でこの戦いで代行者以外の人間が死んだり人間同士の殺し合いがあるかもしれないと思っていたが、代行者の証をつけるならその可能性は低くなるかもと思うルーカス。


「そういうことか、では頼む」


アスターに右手を差し出す。


「つけるのは私ではなくクリオフ様です」


困ったように笑うアスター。


「あぁ、それもそうだな。頼む」


クリオフの方へと向き直る。


「どこでもいいのか」


アスターに尋ねる。


「はい。どこでも構いません」


アスターがそう答えるとクリオフはどこがいいかと目で訴えてくる。右腕を上げてここに頼むと。


クリオフはルーカスの右の二の腕に神力を注いでいき自らの星座を示す牡羊座の紋章を刻んでいく。


「これでいいのか」


刻まれたら紋章をアスターに見せる。


「はい、問題ありません。これより、ルーカス様はクリオフ様の代行者としてアナテマの参加が認められました。アナテマが始まるまでもう数日ありますのでお待ち下さい。それと、この戦いが終わるまだ天界には戻れませんのでご注意下さい。では、私はこれで失礼します」


アスターはそう言うと天界に戻っていく。アスターが消え部屋の中にはクリオフとルーカスだけになる。


「(天界にはもう戻れないのか)」


戦いが終わるまで戻るつもりはなかったが、アスターの口からそう聞かされると少しだけ天界に戻りたい気持ちがあったことに気づいたクリオフ。


「天界に戻れないにら、ここに住むか」


「迷惑なら外にいる」


いきなり自分の家によく知らない神と一緒に暮らすのは嫌だろうと思い外に出ようとすると「そんな必要はない。嫌じゃなければいてくれて構わない。神様ってのは食事はするのか」


外に出て行こうとしたがルーカスがいていいと言うので世話になることにした。


「してもしなくても問題はないが食べれないこともない」


クリオフの返事に微笑み「なら一緒に食べよう」と言うとキッチンに向かうルーカス。野菜や肉を切って料理を作っていくルーカスに「何か手伝おう」と声をかける。


「なら、肉を焼いてくれ」


「わかった」


ルーカスの隣に立ち肉を焼いていく。



ククリオフとルーカスはアナテマが始まるまで、不器用ながらもお互いのことを知っていこうと歩み寄る日々を過ごした。


数日共に過ごし一人の神と一人の人間は生まれて初めて自分を理解してくれる存在に出会えたと喜んだ。そこから、互いに自分の考えやこれからどうしたいかを延々に語っていった。クリオフとルーカスはこの数日が人生の中で一番幸せだと感じた。こんな生活をずっと続けていたいと夢に見るくらいには。


もちろん、そんな未来など存在しないことはクリオフとルーカスが一番わかっていた。だから、ルーカスは必ず勝ってクリオフを十二神の座に留まらせると心に誓った。一緒にいることはできなくても同じ正義を心に抱き続けていれば、隣にいらずとも共に歩んでいけると。


それに、自分にとってクリオフ以上の神などきっといないとルーカスは確信してしまったから。


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