あおみどり

神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ)

第1話 懲役四年

「懲役四年か…」

 ん? 聞き間違いかな…。

 期待しかないはずの、大学の入学式を終えての感想がそれって…。

 スーツから私服に着替えて、初めてのパンプスで赤くなった足をしきりに気にしている。

「ちっ、やっぱり、二人の抱き枕作ってもらえば良かったかも」

 町家の中庭を望む部屋で、座布団も敷かずに、ぺたんと座っている。

 うん、もうただただ絶望しかない背中。

 そっと障子を閉める。台所まで行き、スマホを取り出す。

逸歌いつかくん、お兄ちゃんを助けて。京終きょうばてのアトリエまで来て」

「いいよ」

 返信を確認して、小刻みに頷く。ああ、もう、変な汗が出る。

「無理だよ、あの子と仲良くできる気が全くしないよ…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る