第9話 強襲降下

西暦2030年5月3日 アルノシア公国領モルディア諸島上空


 アルノシア本土より東に600キロメートル離れた地点にある島々、モルディア諸島。ここはかつては独立した王国が支配していたが、アルノシア建国直後に私掠船で周辺地域に甚大な被害を与えていた事が仇となり、自衛隊を中心とした平和維持部隊が進駐。王族は全員アルノシアへ移送され、アルノシア公国政府が信託統治をする事となっていた。


 だが、問題はその王族だった。彼らはかつてベーダ大皇国の王族と血縁関係にあった一族であり、以前よりベーダと交流があったのである。よって国際問題化するのは比較的早く、西欧諸国より日本と比肩する能力を得て初めて、それを表沙汰にし始めたのが、今回の戦争であった。


 そのモルディア諸島の上空に、3機の〈C-2〉輸送機が展開。内部には中央即応連隊第1騎兵大隊所属の兵士達が乗り込んでいた。その数は1個中隊に相当する120名余り。3機全てで1個大隊の総員が搭乗していた。


「降下開始!」


 中隊長の命令一過、兵士達は完全武装で機体より飛び降りる。そして先行して活動している誘導員の示す座標に向けて降りていった。


 この世界には、地球には存在しない技術として、『魔法』がある。彼らは『浮遊魔法』を用いてパラシュートを使わずに空挺降下を果たし、そして着陸を果たす。着陸するや否や、空間収納魔法の魔法陣を展開して、迫撃砲やら無反動砲といったかさばる装備を取り出していく。


「現在、皇国軍は本島を中心に海軍陸戦隊1個連隊戦闘団を展開。陸軍空挺団の1個大隊も到着し、占領を進めております。防空網は幸いにして空爆で損傷させておりますが、再建は時間の問題でしょう」


 中隊長は頷き、そして指示を出す。


「先ずは警備大隊の基地へ突入し、人質となっている友軍を救出。そして水陸機動団の上陸予定地点を制圧し、増援が来れる状態に整えるのだ」

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