迷子
彼の本来の身体はどこへ行ってしまったのだろう。
狭いアパートの中を 一通り探してみたが、
それらしきものは見つからなかった。
洗面台の鏡に映る顔を見る。
他人のようで、
他人ではないのだ。
強いて言うなら、
少しだけ年をとった彼の姿が、そこに映っている。
「……誰なのだ、一体……」
鏡に手を伸ばし、問いてみる。
すると、
『あら? 間違えちゃった?!』
明るい声が降ってきた。
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