春霞

薄曇りの空の下で

満開の桜は

そこだけが

不思議な静謐さに覆われ

佇んでいるようだった

春の風に誘われて

花びらがひらひらと舞い落ちて

足元に薄紅色の道をつくっていく


誰もいない公園のベンチに座って

わたしは

桜を見上げていた


イヤホンからは

サティの曲が流れている


わたしは

あなたを思いだしている


イヤホンから

サティの曲が溢れてきて


春霞のなか

わたしの想いは舞い散る桜に

埋もれてしまいそう

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