心音

ズキッと

胸の奥が

不意打ちのように痛んで

厭な記憶に

つかまりそうになるから

わたしは急いで

感情を遮断する


ドッドッドッと

動悸が身体のなかで

木霊こだましている


何をそんなに怖がる?


対峙するというより

すくんで立ち尽くす


震える指先に

勇気を与えるように

拳を握りしめる


まだだ

まだだ


弱虫の臆病者にも

それなりの闘い方はある


間違いや失敗や後悔を

背負いながらでも

いたたまれなさのなかでも

与えられた制限時間まで

生きると決めただろう?



ドクン、と

心臓が

こたえるように鳴った

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