父の声

「幸せか?」

と、聞かれた

あの日を思い出す

嫁いだあとの

わたしへ尋ねた

父の声



時は流れて

わたしは夫に先立たれ


不器用で頑固な父は

子どもたちを抱えて

未亡人になった娘の姿が

耐えがたかったのだと思う

こんな思いをさせるために

嫁にだしたわけじゃなかったと



昔気質の父

時に皮肉屋でもあり

わたしと父はよく衝突したものだ


そんな父も逝き



あの時の声が

今になって耳の奥に蘇る

胸が熱いもので満ちてくる


「幸せか?」

あの声は慈しみと愛情に溢れて

とても優しかった


そこには


父の願いと祈りが込められていた

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