秋雷

雷の音で目が覚める

少しのうたた寝のつもりが

いつのまにか

部屋は薄闇に覆われていた


稲光が走る


不意に心細さに囚われて

身動きができなくなる

灯りを、

灯りをつけたいのに


闇が深くなっていく


絡めとられそうな弱気を

何とか引き剥がして

ゆっくり息を、する

大丈夫……大丈夫


灯りをつけて

カーテンを閉める

叩きつけるような激しい雨音

震える指先を握りしめて


時計の音に耳をすませ

どくん、どくん

鼓動を合わせながら


呪文みたいに


大丈夫……だいじょうぶ

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