第四十六話 3年後のレイ

 レイが盗賊団、”黒の支配者”に所属してから3年の月日が経った。

 レイの年齢は15歳。まだまだ子供ではあるが、その顔からは嘗てあった幼さが消え、代わりにほんの少しだけ大人びたような雰囲気を醸し出している。

 そんなレイは魔物の革で作られた動きやすいが頑丈な服を着て、自室にいた。

 自室がある。”黒の支配者”でそれが表すこと。それは――幹部になったということだ。

 弱冠15歳のレイが幹部になれたのは、偏に唯一の光属性魔法師であることが上げられるだろう。だが、それだけでは決して幹部になることは出来なかった。

 最終的にレイを幹部へと押し上げたのは――強さだった。


 ドンドン


「……ん? 居るよ。そろそろ行くの?」


 ベッドの淵に座って、暇つぶしに魔力を練って鍛えていたレイはノックの音に反応すると、そう問いかける。

 すると、ドアの向こう側から、「お頭が部屋に幹部を集めているとのことです」と聞こえてきた。


(今日の作戦かな……?)


 確か今日は月に数回ある襲撃をする日だった。なら、呼ばれた理由はそれだろう。

 そう思ったレイは「分かった。今から行く」と言うと、身だしなみを整えてからドアを開け、頭――ルイの部屋へと向かう。

 今拠点にしているのは、3年前にも拠点にしていた洞窟だ。

 あれから、居場所を悟られないように何度か拠点を変えている。そしてほんの数日前に、ここへ戻って来たと言う訳だ。

 レイは3年前、ここに来たことを懐かしく思いながら洞窟内部を進み、奥にあるルイの自室へたどり着くと、ドアをノックし、許可が下りてから中に入る。

 中には大きな丸テーブルと、その周りを囲むようにある椅子。そして、そこはルイと幹部――バラックとノイズが座っている。

 レイはまっすぐバラックの隣へ向かうと、そこの椅子に座った。

 その後、少し待った後、ルイが口を開く。


「それじゃ、作戦会議を始めるよ。まず、偵察隊に街道付近を偵察させたところ、この辺りが一番やりやすいことが分かった。丁度この街道が丘に隠れていて、遠くから見えにくいからね」


 ルイは丸テーブルの上に広げられた大きな地図のある地点を指差しながらそう説明する。


「で、作戦はいつものように、俺が森で固有魔法を発動させた後、馬車に一気に突っ込んでの短期決戦。レイは後方で俺たちを守りつつ回復魔法を使う……のが今までだったんだけど、何やらレイが今回は支援じゃなくて、直接戦いたいってこの前言いに来たんだよね。2人はそれについてどう思う?」


 ルイの言葉に、バラックとノイズは目を見開く。が、直ぐに思案すると、それぞれの答えを出す。


「俺は別にいいと思う。レイは強い。レイを攻撃の主軸に加えれば、より効率的に撃破できる」


 そう言って、バラックはレイの思いに賛成する。


「私は反対ですね。レイの実力は認めますが、唯一の回復役を戦闘の主軸にするのはリスクが高すぎます」


 そして、逆にノイズは反対の意見を口にした。


(……やっぱり反対されちゃうか)


 そうなることは予想していたが、それでも反対されると面倒だなと感じてしまう。

 その前に、何故レイが直接戦いたいとルイに直訴したのか。それは、実戦感覚を掴む為だ。

 より、強くなろうと仲間と模擬戦をしてはいるものの、どうしてもそれは試合のようになってしまい、命の取り合い――レイが危惧している戦いの備えにはならない。それ故にレイは、直接戦うことを求めたのだ。

 そのことを反対するノイズに言うと、ノイズは深いため息をついてから口を開く。


「ああ、そう言えばレイは生きることに固執した狂人したね。今回もその一環という訳ですか……」


 ノイズはそう言うと、腕を組んで俯く。

 そして、諦めたように口を開いた。


「分かりました。私の言葉ではレイを変えることなんて出来ませんからね。ただ、迷惑をかけるようなら許しませんよ」


「ありがとう」


 ノイズの言葉に、レイは安堵したようにほっと息を吐くと、ニコリと笑って礼を言った。

 すると、話が丁度まとまったことを確認したルイが口を開く。


「……うん。君たち全員が賛成するのなら、俺が言うことはない。レイを主軸に加えた、いつも以上に短期決戦で仕留めるとしよう」


 ルイはそう言って、レイの意見が正式に取り入れられたことを言う。

 その後はいくつか細かい取り決めををして、作戦会議は終わったのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る