第四十三話 2年後のリック
リック視点
フェリスさんと一緒に暮らし始めてから、もう2年の月日が流れ、俺は14歳になっていた。
成長期ということもあってか、その間に身長は10センチも伸び、お陰で魔力回路はほぼ完全体となった。お陰で、上級以上の魔法を行使しても、問題は無い。
さあ、そろそろフェリスさんに勝とうではないか。
俺はそう意気込むと、杖を構える。
そして、対するフェリスさんは弓を構えた。
今、俺たちがいるのは家から少し離れた場所の森林。周囲一帯は幾度となく戦った際の余波で、まるで円形を描くかのように木がごっそりと抉り取られている。ここなら、何も気にせず、思う存分戦えるのだ。
「ふぅ……はっ」
俺は杖を構えると、魔力を練る。
直後、中級風属性魔法、
だが、フェリスさんも即座に
あ~……やっぱ上手いわ。ただ受け流すんじゃなくて、限りなく自身の消耗が少なくなるように気を使っている。その辺は、まだまだ敵いそうにないな。
そんなことを呑気に考えながらも、俺はその僅かな隙に詠唱をする。
「魔力よ。我を守れ。
直後、俺の体が風圧の鎧に包まれる。
短縮詠唱で発動したこの魔法は上級風属性魔法、
「魔力よ。全てを貫け。
すると、フェリスさんが短縮詠唱により発動させた
流石にあれら全てを
そう思った俺は、即座に完全無詠唱で
パスッ パスッ パスッ
予想通り、
ヒュン ヒュン
「……!? おうっ」
直後、前方から飛んできた矢を、俺は屈んで回避する。今の、しれっと風が纏っていたから、まともに当たったら
「で……あ、まずっ」
フェリスさんの方に視線を向けた俺は、即座に
さて、俺の聞き間違いじゃなければ、今フェリスさんが詠唱している魔法は……
「……
直後、超圧縮された空気の塊が俺めがけて勢いよく放たれる。
そして、その圧縮された空気が一気に――解放された。
ドオオオオオンンン!!!
耳をつんざくような音が響き渡るのと同時に、突風と衝撃波が俺を襲った。
そして、それを受けた俺は……
ふっ
まるで蝋燭の火が消えるかのように掻き消えた。
「な!? ……い、いつの間に!?」
フェリスさんは驚きを露わにしながら、フェリスさんの右方20メートルの所に立つ俺を見る。
お、これは初めて見せたから、流石に驚くか。
「まあ、唱えている最中に
俺はしれっと魔法発動の準備をしつつ、その時間稼ぎに種明かしをする。
だが、
いや~我ながらナイス作戦!
じゃ、続きをやるか。
「魔力よ。
あらかじめ魔力を練ることで、極限まで詠唱を減らして放たれた上級火属性魔法、
「魔力よ。地獄の業火で焼き尽くせ――」
俺はフェリスさんが
「それはっ!? 魔力よ。我を守れ。
フェリスさんは即座に短縮詠唱の
「
そして、それと同時に最上級火属性魔法、
多分フェリスさんが展開した魔法でも十分防げるし、最悪当たっても身代わりの魔道具があるらしいから問題ないかもだが、流石にこれをフェリスさんにマジで当てにいくのは気が引ける。
フェリスさんだって、さっき最上級風属性魔法、
「じゃ、よっと」
「これで俺の勝ちです」
「……そうね」
俺の勝利宣言に、フェリスさんは少しの間沈黙した後、悔しそうにそう呟いた。
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