第二十三話 歴史の授業
食事の時間が終わり、少し経った頃、ガストンが口を開いた。
「え~皆食べ終わりましたね。では、これから午後の部に移りましょう。では、皆さんは教室へ向かってください。あ、レイ君は先ほどと同じ4組の人たちについて行ってくださいね」
そして、皆一斉に動き出す。レイも立ち上がると、ハリスと共に総合教室を出て、目的の教室へと向かう。
ハリスと共に入った教室は、総合教室も1回りほど小さい教室だ。
すると、ハリスがその場で立ち止まる。
「席はさっきのグループごとに固まって座ることになっている。場所は決まってないが……まあ、いつもあそこだから、あそこにするよ。ついて来て」
そう言って、ハリスは後方奥の席を指差すと、再び歩き出した。
レイはハリスの言葉に「うん。分かった」と頷くと、ハリスの後をついて行く。
そして席に辿り着くと、まずハリスが座り、その右隣にレイが座った。
その後、少し遅れてエリーとバルトもやってくる。
「お、もう来てたのか。じゃ、隣座るぜ」
そう言って、バルトはどっかりとレイの左隣に座り、エリーはまるでバルトから離れるようにハリスの左隣りに座った。
その後、少ししてから教室のドアがガラリと開き、ガストンが入って来た。
ガストンはその場で席に座る子供たちを見て、全員居ることを確認すると、教壇に立つ。
すると、まるで蝋燭の火が消えるかのように、すっと騒ぎ声が収まった。
「ありがとう。では、これから授業を始めます。今日はレイ君初めての授業なので、慣らすことも兼ねてディート帝国の歴史について、復習するとしましょう」
ガストンは穏やかな声でそう言うと、手に持っている教科書をぺらりと開く。
「では、まずは成り立ちから。ディート帝国が成立したのは今から1217年前です。初代皇帝、シュウヤ・フォン・グランド・ディート皇帝はここから南方に広がる広大な平野、グランド平野で建国しました。これが次第に大きくなり、時を重ね、今の広大な帝国があるという訳です。では、ここで1つ問題を。何故、初代皇帝が来られるまで、そんな広大な平野に元々人が住んでいなかったのでしょうか? ハリス君」
そう言って、ガストンはハリスに問いを投げかける。
その問いに、ハリスは悩むことなく口を開く。
「はい。それは、強大な力を持つフレイムドラゴンというドラゴンがそこを巣にしていたからです」
「はい、正解です。ハリス君の言う通り、グランド平野には最上位龍の一角、1000年以上の時を生きたと言われているフレイムドラゴンがいました。かの龍はずっと人に手を出すことはなかったのですが、欲深い人間に巣から卵を盗まれたことに怒り、人間に牙をむいたのです。当然その人間は捕らえられ、卵は返されたそうですが、それでも怒りは収まりませんでした。そこに、世界各地を旅していた初代皇帝が噂を聞きつけてやってきて、激戦の末に討ち取ったというわけです」
そこで、ガストンは話を切ると、ページを1枚めくる。
「初代皇帝はその後、助けた国では英雄と称えられましたが、その国の王はそれを気に喰わないと言い、初代皇帝に嘘の罪をでっち上げて殺そうとしました。ですが、民衆から大きな支持を得ていた初代皇帝は、民衆と共に、逆にその国を滅ぼしました。そして、新たな首都としてグランド平野を選び、建国したと言う訳です。では、ここでまた問題を。初代皇帝が建国の際に宣誓したお言葉は何でしょうか? では、レイ君」
そう言って、今度はレイに問いを投げかける。
その問いに、レイも悩むことなく口を開く。
これは帝国の民として、知っていて当然のことだからだ。
「はい。『どうか、ディート帝国を永遠のものに』です」
「はい、合ってますよ。そして、その言葉通り今もなおディート帝国は存続し続け、今や近隣国の中では最も歴史の古い国となっています。皆さんもその意思を継ぎ、永遠のものにしていきましょう。では、次はそれから52年後に起こった巨大な猫型魔獣の大群との戦い、にゃんこ大戦闘についての話をしていきましょう」
そう言って、ガストンは再び1枚ページをめくった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます