第十話 カナリア村の調査
街に戻った3人はすぐさま調査隊を派遣すべく動き出した。
衛兵全員にカナリア村の惨状を伝え、調査の準備を急がせる。
そして次の日の早朝、ゲイリスを隊長とした60人の調査隊がカナリア村に向けて出発した。
調査隊はやや急ぎめのペースで進み、数時間後、カナリア村に到着した。
カナリア村に到着した調査隊は、そのままカナリア村の中に入る。
「まじか……」
「予想以上だな……」
「これはキツイ……」
調査隊の人々は、焼け落ちた建物の残骸と、辺りに転がる死体を見て、顔を青くする。
死体を見たことがない新人に至っては、口を抑えて立ち止まり、今にも吐きそうになっている。
それほどまでに、ここはひどい惨状なのだ。
カナリア村に入って少し歩いたところで、ゲイリスは後ろからついてくる調査隊の方に振り返ると、口を開く。
「A班とB班は建物の残骸の撤去及び生存者の捜索。C班は死体の数を確認しながら、死体を埋葬してくれ。あと、全班に言えることだが、襲撃者の手がかりになりそうなものを見つけたら、早急に俺に報告してくれ」
「「「「はい!!」」」」
こうして調査隊は一斉に動き出した。
早速、A班とB班が建物の残骸に近づく。そして、ひときわ大きな建物の残骸に手を当てると、詠唱を始める。
「魔力よ。無の力となりて我の身体を強化せよ。
2人は大きな建物の残骸を
「おーい! 持ってきたから細切れにしてくれ!」
2人は村の周りに広がる森の中に建物の残骸を置くと、仲間を呼ぶ。
「あ~おっけおっけ。魔力よ。風となりて全てを斬り裂く無数の刃となれ。
2人の頼みに頷いた男は杖を構え、詠唱をすると、無数の小さな風の斬撃を放つ中級風属性魔法、
ザン ザン ザン
建物の残骸は一瞬にして手のひらサイズの木くずとなり、ボロボロと崩れ落ちた。
一方その頃、C班は死体の処理をしていた。だが、これはかなり難航していた。
というのも、死体のほとんどが原型をとどめていないのだ。
上半身だけの死体、首だけの死体、斬られた上に燃やされたせいでちゃんと見ないと死体だと分からないような死体まであった。
だが、それらを何とかある程度集め、記録を取ると埋葬の準備に入る。
「魔力よ。この大地へ干渉し、土を操りて穴を開け。
土属性の魔法使いが地面に穴を造る。
そこに、他の人がどんどん死体を入れていく。そして、入れるだけ入れると、その穴の前に光属性の魔法使いが立ち、詠唱を始めた。
「魔力よ。神聖なる光となりて全てを浄化せよ。
すると、穴の中に入れられた死体が神の祝福を受けたかのように光り輝いた。これで、グールやスケルトンなどのアンデッド系の魔物になる心配がなくなる。
C班はその後も次々と死体を埋葬、浄化していった。
こうして夕方になる頃には、村はほぼ完全な更地となっていた。
だが、肝心の襲撃者に関する手掛かりが一向に見つからない。
襲撃者らしき死体や武器防具の1つや2つ、絶対にあるはずなのだ。それなのに全く見つからないことに、調査隊の人々は得体のしれない不気味さを感じていた。
一方、この事件の裏をあらかた知っているゲイリス、ジン、ジークの三人はどこか納得したような顔をしていた。
「やはり、証拠は残していないようだ。盗賊の襲撃らしさを見せつつ、証拠は消す。これでは、自力で真相に辿り着く人は今後現れないだろうな……」
ゲイリスはそう呟くと、気を重くして、深く息を吐く。
きれいごとだけで国を治めることは出来ないと分かってはいるものの、心のどこかに帝国のやり方に対する怒りがあった。
もっと他にいい方法があったのではないかと、そう思っているのだ。
だが、今はもう考えても無駄なのだ。手遅れなのだ。
ゲイリスはそう自身に言い聞かせると、集まってきた調査隊の方を見る。
「……これで調査を終わりにする。街に帰るぞ!」
「「「「はい!!」」」」
こうして、衛兵隊によるカナリア村の調査は終わったのであった。
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