地獄の沙汰も仕事次第

 目の前を製品が流れていく。全自動化されたペットボトル工場。俺のやることは何もない。こうやって流れてくる製品を、ただただ見つめることが仕事だ。


 何も考えることはない。体を使うこともない。時間が流れていけば給料が振り込まれる。高い給料でもないが、暮らしていくには十分な額だ。


 昔の人からすれば、天国と思えるかもしれない。何もせず、給料が振り込まれるこの人生。


 ただ一言だけはっきりと言えることがある。


 ここは地獄だ。


 俺はこうやって製品を眺めるために生まれてきたのか。そんなことのために生まれてきたのか。だれか答えをくれ。いや、仕事でいい。仕事をくれ。生きていく理由に足る、仕事をくれ。


 と、思っていた。しかし今日、事件が起こった。少し先を流れているペットボトルが、なんと倒れているのだ!


 俺は持ち場を離れ走った! 待つことはできない。なぜならそこに仕事があるから。ペットボトルを直す仕事がそこにあるから。走った。転んだ。足をくじき、歩くこともままならない。しかし俺は進んだ。痛む足を引きずりながら進んだ。そして、倒れたペットボトルを



――直した。



 俺の体に快感が走った。これが達成感というヤツかもしれない、そう思った。痛む足をひきずり、俺は持ち場に戻った。


 それからの俺は、ペットボトルが倒れていないかを確認する毎日になった。少し、いや、かなり仕事に張り合いが出た。毎日がバラ色になった。


 今日も俺は準備体操をした。ふくらはぎと足首は入念に。クラウチングスタートの姿勢も取った。準備は万端。仕事よ、早く来い。早く。早く。早く!

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