飛び込み営業一件目

 ふぅ……俺は今、飛び込み営業をかけるお店の前にいる。落ち着け俺。今から言うことを頭に浮かべるんだ。


 こんにちは。求人誌を出しいている会社のものなんですが、ご担当の方いらっしゃいまひゅか?


 噛んだ。二回も。もう一回。


 こんにちは。求人誌を出している会社のものなんですが、ご担当の方いらっしゃいますか?


 ふぅ……大丈夫。俺ならできる。何度も練習したじゃないか。会社の先輩にもうまいと褒められたじゃないか。出来る。俺ならできる。大丈夫。大丈夫なんだ。


 さぁ、俺の足……前に……出ろ……!出ろよ!


「こんにちは!」


「いらっしゃいませー。おひとり様ですね?」


「求人誌を……」


「はい! お客様ご来店でーす! ありがとーございまーす!」


「……出している……」


「ただいまランチのお時間なのですが、こちらからお選びください。ご注文お決まりになられましたら、ベルでお呼びください」


「あの……」


「あ、ご注文お決まりでしたか?」


「生姜焼き定食を……」


「はい! ご注文いただきましたー! ありがとーございまーす!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る