罪の名前

「よお、新入り。いやいや、まぁそう構えるなって。ここはこの国の重罪人が集まる刑務所だ。お前も何か重い罪を犯したんだろ? そういう意味じゃ、俺とお前はお仲間だ。仲良くやろうぜ」


「なぁ、新入り。ここは刑務所で堅苦しいところだ。しかし、ここにも他の受刑者との関係がある。社会がある。ルールもある。犯しても罰せられることは無いルールだが、まぁ守っておいて損はない。他の受刑者に嫌われるってのは、あまり得策じゃない」


「でだ、新入り。ここのルールを簡単に教えてやる。なぁに簡単なことだ。俺たちはこの中では、あだ名で呼び合う。そしてそのあだ名は、犯した罪に関係するもの、になる。そう難しい顔をするなって。お前は罪の名前を教えてくれればいい。そうすればあだ名が決まり、晴れて本当の意味でお仲間になるわけだ。あだ名は俺がつける。俺はここでは顔役なんだぜ?」


「さて、新入り。お前の罪は? ほうほう……お前、中々すごい罪を犯したな。そうは見えないんだがな。そうだ。そうだな。ちょっと待てよ」


「新入り。チエ。チエで行こう。意味は分かるな。いいあだ名だ。いっそ惚れ惚れする。さて、短い付き合いになるかもしれんが、よろしく頼む」

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