14.おやすみ
かくして私はトラウマメイカーの女モブ改め、端役悪役令嬢のメイカさんとなりました。
それでもって本編攻略キャラの一人・コルフェノールの人生を左右したイベントを回避してしまったうえに、幼い彼をさらってきてしまいました。
なお、このままだと彼を自分の家の子にする流れとなっております。
(これでよかったんだろうか……なんて、くよくよしてても仕方ないか。なるようになれ! って気持ちでいくっきゃないわ……!)
よくよく考えたらコルフェが将来教会騎士になるのって、実力もそうだけど例の変態神父がいたお陰で教会とコネクションがあったからって可能性もある。
だとしたらだいぶやらかした感あるなこれ。
コルフェをうちの子にするならば、メイカが探しにきたと嘘をついた架空の婚約者との間に出来ていた子供を引き取ってきたとかそういうことにするのもありかな。
年齢も多分、私が二十代でコルフェが八歳くらいだからあり得ない話しでもないと思うし。
ご両親も私が生んでいた子だって言えば可愛がってくれるでしょう。
つじつまの合わせようは、まあ、ある。
疑似家族としての生活に支障はないとして、問題はこれからのコルフェの教育面。
彼が将来有能な教会騎士になる道は、ある意味私が絶ってしまったかもしれないのだ。
きっとコネを使って騎士団に入るとか、そういう展開だったかもしれない教会騎士への入り口を周回ムービーのごとく私が無慈悲にカットしてしまった。
上手く行くとかいいながら、早速悩みが一つ出来てしまったぞ。
「あっ、ちょっと!」
私のそんな気をよそに散々泣き疲れたあと、ほっとしてベッドに倒れようとするコルフェの肩を掴まえる。
「コルフェ、髪まだ濡れてるでしょ」
「えへへ。えっと……見ててくださいね?」
笑いながら手を二回叩いて髪をすく動作をするコルフェ。
ぶわり。と、突風が起きて濡れていた彼の髪を一瞬で乾かしてしまった。
地味な魔法ではあるけれど、いざ目の当たりにしたら結構すごい。
これが作中最強ランクの魔法の力で、悪いことを考える大人たちが欲しがっている能力ってわけか。
確かにものすごく便利そうではある。
今度は座ったままで片手をかざし、指先で糸をたぐるようなしぐさをするだけでティーカップが彼の手元に飛んできた。
執事さんがさっきいれてくれた紅茶を、
「こういうのもできるよ。はい」
私に手渡して得意気に笑う。
ちょびっと溢したのはまだ制御が曖昧だからみたい。
大人になってこれをマスターすると、オープニングで主人公の仮面を触れずに取り去る印象的なワンシーンになるわけだ。
「これで平気」
「うん。おやすみ」
きちんと寝転がり掛布をたぐり寄せるコルフェにおやすみの挨拶をする。
「メイカさん。おやすみのキス、してくれませんか?」
「私、まだあなたのお母さんじゃないんだけどなぁ」
「これからお母さんになってくださるんじゃないんです?」
「考えておきます」
「おやすみなさい、メイカさん」
愛らしいリクエストに応えて額にキスをすると、彼は満足そうに笑って眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます