『天と地と光と蔭と生と死と巨億の愛と我の孤独と。Version2.0』群像新人文学賞一次予選通過作品

九頭龍一鬼(くずりゅう かずき)

序章

 なんじはそれである。

        ――『ウパニシャッド』


 序章


 宇宙は『ひも』だった。

 虚時間を浮遊する『ひも』だった。


 約百三十八億年のすいてんじようきゆうの大宇宙はほうたいたる円環状の『ひも』としてあんたんたる虚時間のなかを『しんとう』していた。

 かんどくの永遠をけみした大宇宙は疾風迅雷の『インフレーション』の刹那にほうちやくろうぜきの『ビッグバン』によってなる非ユークリッド幾何学的なる真空地帯として巨億の『ひも』を誕生させた。

 さいたる大宇宙はきようらんとうで無涯無辺の真空空間を完成させる。

 ――はずだった。

 るいじやくなるらんしよう時の宇宙はしゆもなく『ビッグクランチ』の発生によって再度めいもうたるくろのような虚時間に回帰してしまった。

 ようなる『サイクル』をけみして五十回目の天地かいびやくほうはいとして膨張していった大宇宙に発生した億兆の銀河群・銀河団・超銀河団の片隅にけんらんごうなる銀河系がひやつりようらんの太陽系がこくほうじようの地球が構築されると罌けしたる元素同士の衝突によってたんげいすべからざる生命が発生しやがもうまいなる人類が誕生した。


 すべては『ひも』の団塊であった。

 五人の悲劇は『ひも』かららんしようをむかえた。


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