第14話 遠くから観察する

 帝国領に移り住んだ私は、早く馴染めるように帝国の文化や歴史など勉強するのに時間を費やしていた。帝国で雇った先生に習いながら、少しずつ覚えていく。


 その合間に、ギオマスラヴ王子とリザベット男爵令嬢の仲睦まじい様子についての調査結果を確認していた。


「なるほどねぇ」


 受け取った書類を、ペラペラとめくって読む。イステリッジ公爵家が離脱した後の王国の反応や動き、状況について調査するという名目で、重要人物である王子と婚約相手の情報を集めてもらっていた。


 その報告書が、私の手元に届いていた。真実の愛が存在すると言っていた彼らが、どのような状況にあるのか非常に興味がある。


 報告書を読み進める。ふむふむ、なるほど。


 ギオマスラヴ王子は王位を受け継ぐ準備を進めていて、国王としての振る舞い方を学ぶための再教育を受けているらしい。学園も休んで、自分の勉強に明け暮れているようだ。


 以前は、学園生活の方が大事だと言って、国王としての勉強を疎かにしていた彼が真剣に取り組んでいる。これが、真実の愛というものの影響なのかしらね。


 私と彼との間には、愛情なんて存在していなかった。親が決めた相手。真実の愛なんて、当然存在しない。だから、その頃は王になるための勉強も真剣に取り組めなかったのかも。


 もしかしたら、これは意外と上手くいくかもしれないわね。


 でも普通は、王子のやる気や気持ちなんて関係ない。王になるために生まれたからには、その役割を全うするために必要なことをやるだけ。王として、国を導いていかないといけない。


 まあでも、彼が変わったのは間違いないみたいだし、どれだけ続くのか楽しみではある。どこまで、真実の愛というものの効果が続くのか。それで、立派な王になるれるのかどうか。


 最後まで貫けたら、本当に凄いと思うけどね。




 そして、新たな婚約相手であるリザベット・ルシヨンヌ男爵令嬢について。彼女については詳しく知らなかったので、来歴から調べてもらった。


 とあるパーティーで王子と出会って、猛烈にアプローチしたそうだ。王子も彼女のことを気に入って、真実の愛を育む相手に男爵令嬢が選ばれた。


 よく男爵令嬢が、王子を相手にアプローチしたものだ。その時は、婚約相手だった私も居たというのに。貴族社会というものを理解していないのか、それとも何か勝算があったのか。失敗したら大きなリスクがあるのに。度胸が凄い。


 何も考えていなくて、無謀なだけかも。


 ルシヨンヌ男爵家も娘の蛮行を止めなかったのか。それとも、知らなかったのか。もしかしたら、実家から指示された可能性もある。公爵家を敵に回すリスクよりも、王家との繋がりを得る方がメリットが大きいと判断したのかもしれない。


 実際に、王家との繋がりを得ることには成功している。その影響で、王家とイステリッジ公爵家の関係が終わったのは予想外だったんじゃないかしら。それとも、その後釜を狙ってとか。それは、私の考えすぎかしら。


 とにかく、リザベット男爵令嬢はギオマスラヴ王子と婚約するに至った。


 その後、男爵令嬢は王子にねだって貢がせていると、社交界で噂になっているみたい。未来の王妃になれると舞い上がって、高価なドレスや宝石を手に入れているらしい。


 ちょっと、浮かれるのが早すぎるんじゃないかしら。まだ、結婚すらしていないのよ? いくら何でも、気が早いと思うんだけど。私は、リザベット男爵令嬢の軽率な行動に呆れてしまう。貢ぐ王子もダメだけど。


 2人の現在の状況については、こんな感じかしら。引き続き、2人の動向を調査してもらいましょう。そして、真実の愛がどうなるのか、この目で結末を見届けたい。

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