君を買いたい〜奴隷の彼女とスラム街の青年〜
るい
序章
燃える城を見て何思う?
炎が燃え広がっていく城に、泣き崩れる国王。
「城がああああ!」
国王の叫び声を聞きながら、俺は奴隷の彼女であるコトミの手を掴む。
「ここから、逃げよう」
俺は、そう言って、彼女の手を掴みながら、城内を走り抜けていく。
「武器を取れー!」
「奴隷を苦しめた、国を打倒せよー!」
コトミの救出に向かうさい、王のコレクションであった奴隷を解放した。奴隷達は、自由を求めて立ち上がっている。
「ねぇ、ロック。この国はどうなるの?」
俺は、彼女の方を向いた。金色の髪は炎で輝き、美しく見えたが、目は涙ぐんでいる。
「俺にもわからない」
二十年間、生まれ育った国、サクラ王国。幼少の頃から、スラム街で見えていた城には火が放たれて、城全体が炎に包まれるのも時間の問題となっていた。
今まで、城が燃えているとこなんて見たことない。燃える城を遠くから見たら、どう思うのだろうか。
「この扉を通れば地下水路がある。そこから、逃げよう!」
「うん」
俺は、木製の扉についているドアノブに、手をかけて開けようとする。しかし、しばらく開けられてないのか、びくともしなかった。
「コトミ、下がってくれ」
俺は、コトミを下がらせて、扉を何度も強く蹴る。しかし、扉は全くと言っていいほど開かない。
「こんの!」
俺は、もう一度強く蹴ると、扉が外れ暗闇の階段に落ちて行った。
「よし、行こう」
俺は、壁にかけられていたランタンと、隣の壁穴に入っていたマッチを手に取り、コトミを連れて階段を降りる。
「ロック。地下水路の中、真っ暗だよ」
下まで、行くと、方向感覚がわからなくなるくらい、暗闇に包まれていた。
「今、ランタンに火を点ける」
俺は、マッチを使って、ランタンに火を点けた。
「出口は、こっちだ」
コトミを先導する形で、地下水路内を進む。地下水路の道順は、仲間からもらった地図を参考にした。
しばらく、進んで行くと月明かりで照らされている水路が見えてきた。
「あそこが出口だ」
ここを出れば、城の城下町に流れている川へ出る。
「城が燃えているぞ!」
「何が起きているんだ!?」
地下水路の出口に近づいていくと、人の叫び声が聞こえてきた。
「コトミ、一回待ってくれ」
「うん。気をつけてね」
もしかしたら、水路の出口に兵士がいるかもしれない。必死な思いをして、国王から、コトミを取り戻して、城から出られたんだ。こんな所で、捕まりたくない。
「誰もいないな」
水路の出口には、兵士がいなかった。奴隷達の武装蜂起で、対応が手一杯なのだろう。
「城下町に住む人も、燃える城にしか注目していない」
水路の近くにいる人の視線は、燃える城の方向を見ており、水路を見ている人は誰もいなかった。
「コトミ。大丈夫だ。行こう」
俺は、再びコトミの手を掴み、地下水路の出口を出て、水路に沿って歩く。
「ロック。この先は、どこに繋がっているの?」
「この水路は、城の近くにある森へ繋がっている」
森の中に逃げ込めば、逃げることができる可能性が高くなる。森の中まで行ったら、逃げ切ったと思ってもいい。
「コトミ」
「なに?」
俺は、コトミの手を強く握りしめる。
「今日で、奴隷との生活は、お別れだ。自分らしい人生を歩もう」
「うん、そうする。ロック、王都の道案内してよね」
コトミは、嬉しそうな表情で返事をした。
俺は、その表情を見て、心から安心した。コトミを早く安全な場所に連れて行こう。
俺とコトミは、先に進む。
「放火魔がいたぞ!」
「やはり、森に逃げるつもりだったか」
もうすぐで、森に出られる。そう思った矢先、俺とコトミは、王国の兵に囲まれた。
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