あなたに会えたら死ねるのに
手塚エマ
第1話
美女と薔薇をコラボさせた写真なんてテンプレ過ぎて新鮮さには欠けるのだが、
祥子はこの館に一人で住んでいて、家事などは住み込みの家政婦に任せている。
庭の薔薇の手入れをしていた祥子に思い切って声をかけ、写真部の部活動の一環として写真を撮らせて欲しいと頼み込んだのは三か月ほど前。
はじめは面食らったような顔つきだったが、それでも承諾してくれた。
「写真をお撮りになられるなんて、ご立派ですのね」
浮世離れしている彼女は時折首をかしげることも言う。
また、それが彼女の雰囲気にマッチして、妙に可愛いかったりしてしまう。
写真なんてスマホひとつで撮れるのに。立派でも何でもないのだが。
以来、学校帰りや週末に祥子を訪ねて写真を撮るのが習慣になっている。
「こんにちは」
祥子の洋館は赤レンガの塀で囲まれ、門は真鍮の唐草文様。造りは百年以上前にも見えるが、内部はリフォームされている。門のインターホンを押すと、すぐに家政婦が家を出て来て門扉まで来る。
「いつもの雅史です。祥子さんと今日の約束はしています」
「畏まりました。お入りください」
爛漫の薔薇に覆いつくされた洋館の玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履き替える。家政婦が無言で案内をする祥子の部屋まで、板張りの廊下をぱたぱた歩く。
着物姿しか見たことがない祥子だが、家の中では足袋で過ごす。
背中まである黒髪を元結でひとつに束ね、垂らしている。
輪ゴムではなく、髷を結う時に用いられる純白の元結だ。
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