売読新聞首都圏版 2021年4月14日付

 4月13日未明、花びらが散った後の桜の木の枝に縄をくくりつけて首を吊ってる人がいると、通りかかった新聞配達員が発見し、警察に通報した。


 持っていた財布に免許証があり、西脇大地さん(24)と確認された。遺書はなく、警察は自殺と事件の両面で捜査を進めている。


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 朝刊の配達途中だったからね、びっくりしたよ。


 まだ薄暗い中を、配達時間指定の家があって、順路から外れた家にまっ先に配達に行く途中に見たんだよね。


 あそこの桜並木はわりと人気があって、花が咲いてる時は、花見客がよく集まってたよ。コロナ前はね。みんなブルーシートを敷いて、たこ焼きや焼きそばの屋台が並んで、みんなクーラーボックスに缶ビールを冷やして飲んでたよ。俺も新聞配達の仲間達と毎年花見はしてたからね。


 でも、歌の文句じゃないけど、花びらが散った後の桜がとても冷たくされるように、4月の半ばも過ぎると人通りもあまりなくなって、寂しい通りになるんだよね、今の時期は。


 その寂しい桜の枝で首吊りって、悲しい人生の終わらせ方だよね。華やかな時期の後だからね。


 見た感じ、まだ若い感じの人だったよ。GAPのパーカー着てて。でも首吊りは嫌だと本当に思ったね。ションベン垂れ流しの、口から泡吹きまくりの、って姿は人には絶対見られたくないね。


 どんな理由があったのか知らないけど、俺だって高校中退してから、職を転々として、冷や飯食わされて、煮え湯を飲まされて、今の新聞配達の仕事にたどり着いて、毎朝2時からトラックで運ばれる新聞の束の荷受けからチラシ挟みやら毎日やってつらいけど、なんとか生きてるもんな。


 コロナが終わればまたみんなで酒盛りも出来るし、楽しいことだってあるかもしれないけど、死んだら終わりだもんな。俺は生まれ変わりとか信じないから。人は死んだら無になるだけ。千の風にもならないよ。


 だから生きてるだけで丸儲けなんだよ。さんまさんの言葉だけどな。本当にそう。だから、それを自分の娘に名付けたさんまさんはすごいな。人生についてわかってるよ。


 

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