日毎新聞関東版 2021年3月9日付

 S県O市立◯◯中学校の卒業式で、壇上にいた西崎和輝校長を刺したとして、中学の3年生の女子を教師たち数名で取り押さえ、110番通報して、駆けつけた警察官に傷害と殺人未遂の罪で逮捕した。


 その女子は、西崎和輝校長(57)の挨拶の途中で壇上に登り、隠し持っていた刃渡り20センチの登山ナイフで腹部を刺した疑い。西崎校長は病院に運ばれたが、意識不明の重体で、その後、出血性ショックで亡くなった。


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 急に椅子から立ち上がったんです、その子。校長先生の挨拶の後で卒業証書授与式に移る前に、壇上に駆け上がって、挨拶をしていた校長先生を刺したんです。


 血がびっくりするほど噴き出して、壇上は血の海になったんです。血の海なんて見るのも、そんな言葉を使うのも初めてです。


 その子は違うクラスの子なんですけど、おとなしい感じで目立たない子でした。よくは知りませんが。


 校長を刺した後、その子はすぐにそばにいた先生たちに取り押さえられ、登山ナイフも体育の二宮先生に足で踏まれて壇上の隅まで蹴られて、うつ伏せにされたんです。


 でもその子のすぐそばに、校長先生の前に置いてあったマイクが転がっていたんです。校長先生が倒れた時に、机から落ちたんでしょう。その子はこう、つぶやいてました。気味の悪い声で。


 『かいわきらいですか』と。


 何度も何度も。


 マイクがその声を拾い、体育館中に響き渡りました。するとキャーと叫び声をあげて耳をふさぐ子や、泣いてる子もいました。みんながパニックになって、どうしていいのかわからないみたいでした。


 卒業式は中止になり、みなバラバラに親たちと帰されました。

 

 私は憤っていました。本気でキレてました。コロナのせいで登校も出来ない日が続いて、体育祭や文化祭、修学旅行も中止で、まったくアオハル的なことが出来なかったので、やっと卒業式はみんなで出来ることになったというのに、こんなことになるなんて、私はその子をゼッタイに許せないです。


 その子を何がそうさせたかはわかりません。コロナのせいで鬱憤がたまっていたのかもしれません。

だからといって、みんなが楽しみにしていた卒業式を、卒業証書の入った筒を持って、みんなで写真を撮ろうという約束も、


好きな人の制服のボタンをもらうという儀式も、

そのすべてを台無しにしたその子を私は一生許さないと思います。


 罪にならないなら殺してやろうと思います。

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