北海道M新報 1977年8月1日付

 〇〇市C町の児童公園で、三輪車で遊んでいた里中真理恵さん(5歳)が夜になっても家に戻って来ないとM署に父親から通報があった。


 公園の前には交通量の多い道路があり、事件と事故両面で捜査が進められている。


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 その子は父親の仕事の都合で、春に山梨県から〇〇市に越して来て、幼稚園の夏休みに1人で公園で遊んでたみたいだね。


 道民ならわかるんだけど、三輪車をひっくり返してペダルを手で回して『いーし焼きいも、おいも』って言う、遊びがあってさ。


 その子も〇〇市になじんできて、こっちで出来た友達にでも聞いたんだろうな。内地の人はやらないみたいだから。


 その姿をお昼に近所の豆腐屋さんのおばさんが見かけて以来、誰もその子を見てないらしいよ。


 その子の両親は駅や繁華街で写真の入ったビラを配って、必死に探しているけど、まだ見つかってないんさ。


 でもあの公園の砂場の所に夜中に通りかかった車が、白い夏服を着た女の子が三輪車で遊んでいるのを見たんだって。


 そんな深夜に子供が遊んでるなんてありえないっしょ。近くにスナック街があるから酔い客目当てにタクシーがよく通るんだけど、その運転手が何人も目撃してるから、本当に出るんだろうね。


 幽霊が出るってことはもう亡くなってるんだろうか。かわいそうに。今も砂場で三輪車ひっくり返して遊んでるんだろうね。時々、花がたむけられてるよ。まあ花が置かれてるっていうのも怖いけどさ。


 児童公園はしばらく立ち入り禁止になったよ。親だって子供を遊ばせるの嫌がるっしょ。そんな神隠しみたいなことが起きた公園なんて。


 うちはもう子供は大きくなってるから心配ないけど、小さい子供がいる親は心配だろうね。人さらいがまだ近くにいるかもしれないんだから。

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